なぜ女性皇族はこれほどまで注目されるのか…専門家が指摘「ティアラと十二単が放つ”ハレ”の力の求心性」


【画像】皇后雅子さま(2019年5月15日撮影)

■「日本の象徴」とは何か

 日本国憲法において、天皇は日本の象徴、日本国民統合の象徴と位置づけられている。

 では、象徴ということばは何を意味するのだろうか。

 『日本国語大辞典』では、「ことばに表わしにくい事象、心象などに対して、それを想起、連想させるような具体的な事物や感覚的なことばで置きかえて表わすこと」と説明され、その実例として、「十字架でキリスト教を、白で純潔を、ハトで平和を表わす」ことがあげられている。

 天皇が日本の象徴であると言うとき、果たしてこの辞書での説明にかなっているのだろうか。十字架が立っているのを見てキリスト教を連想するのは自然だが、ハトが飛んでいるのを見ても、必ずしも平和を連想するわけではない。天皇の存在に接して、必ず日本を思うわけではないだろう。

 天皇が果たす役割については本書で詳述したように、国事行為が中心である。それ以外に、公務を果たさなければならないことについては「はじめに」でふれた。公務は天皇だけが行うわけではなく、皇族も行う。公務において、天皇や皇族が直接国民と接することもある。あるいは、その様子が各種のメディアで報道されることもある。

■「日本の元首」とは誰なのか

 天皇の公務のなかで極めて重要なのは、外国の元首夫妻などの賓客と会う「ご会見」である。

 日本の元首が誰なのかは、実ははっきりしない。天皇を元首とする考え方もあれば、内閣総理大臣を元首とする考え方もある。そこに揺れが生じるのは、そもそも元首の定義が一つに定まっていないからである。定義の仕方によって、天皇が元首になったり、総理大臣が元首になったりするのだ。

 ただ、日本に海外の国賓(こくひん)が訪れたとき、天皇夫妻は「歓迎行事」、「ご会見」、「宮中晩餐」に臨むことになる。これを内閣総理大臣が果たすことはない。

 さらに天皇夫妻は、国賓が東京を離れる際にはその宿泊先を訪問し、見送りをする。それは「ご訪問」と呼ばれる。国賓を送り出した海外の国からすれば、天皇こそが日本の元首に見えるに違いない。

 新年には、皇居で一般参賀が行われる。そこには天皇をはじめ各皇族が姿を見せることになるものの、内閣総理大臣がそれをすることはない。

 夏季オリンピックは二度、日本で開かれている。「オリンピック憲章」では、開会宣言は各国の元首が行うことになっており、二度ともその時代の天皇が行っている。このことでも、天皇は元首に極めて近い存在であるということになる。



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