イタリア人名将カルロ・アンチェロッティが、伯国代表の新監督に就任する矢先に、スペイン検察から脱税容疑で起訴され、4年9カ月の実刑を求められていることが明らかとなった。2026年のW杯でブラジルの6度目の優勝を目指す大任を担う一方で、彼はスペインでの法的トラブルという厳しい現実にも直面している。
アンチェロッティは、レアル・マドリード監督として2014年と2015年の在任期間中に、自身の肖像権収入の一部を申告せず、脱税行為を行ったとされている。スペイン検察は、実態のない外国法人に肖像権を移転させたうえ、スペイン国外に所有していた複数の不動産も申告していなかったと主張。脱税額は約100万ユーロ(約6280万円)を超えると見られている。
検察官は「アンチェロッティは署名した内容を十分に理解していなかったと主張しているが、これは通用しない」と強調し、「詐欺、隠蔽、申告漏れの疑いは明確だ」と断言した。これに対し、アンチェロッティ側の弁護団は無罪を主張し、「彼は署名内容を完全には理解していなかった」と反論。スペイン司法の対応を批判し、この問題は行政的に解決可能だったはずだと訴えている。
アンチェロッティ本人も容疑を否定し、「クラブ側の助言に従いこのような給与体系を選んだ」と説明。2025年4月初旬にスペインで証言を行ったが、検察は引き続き実刑を求めており、現在は裁判官の判断を待っている段階だ。本人は「これは8年前に始まった古い話で、私は当時スペインの居住者ではなかった」と述べ、既に未納税分を支払っていることから実刑回避の可能性もあると指摘している。
この問題はアンチェロッティが5月26日に正式にブラジル代表監督としての職務を開始する直前に浮上した。彼は2026年ワールドカップの予選を控え、6月6日のエクアドル戦、9日のパラグアイ戦に向けて代表メンバーを発表する予定だ。メンバー選考は事前に準備された候補リストを基に行われる見込み。
脱税容疑はアンチェロッティにとって新たな大きな試練となった。ブラジル代表チーム再建という重要な使命に加え、スペインでの裁判が彼の将来に影を落としている。ただし、有罪になっても、すでに税金を支払っているため実刑になる可能性は低いと見られている。
世界最高峰の舞台での成功を目指すアンチェロッティの闘いは、ピッチの内外で続くことになる。