週に一度、自分でお腹にペン型の注射を打てば痩せられる――そんな魔法のダイエット薬「GLP-1」*。日本でも近年、多くのクリニックが扱うようになったが、この医薬品の闇市場が水面下に存在していた。その実態に迫った!
*「GLP-1受容体作動薬」は、血糖値を下げる医薬品で、糖尿病治療薬として開発された。食欲を抑える効果があるため、近年は痩身目的での使用が世界的に拡大。日本でも女性を中心に多くのユーザーがいるが、一方で吐き気や下痢などの副作用が報告されている。
調剤薬局からの横流し! 大量転売でボロ儲けの実態
「焼き肉をたくさん食べたとき、翌日はお昼になってもお腹がすかないことってありますよね。あの感覚です。常に胃の中に何か入っている感じがして、食べる量が減るので痩せますよ。2か月で4kgくらい体重が落ちました」
痩身目的でGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)を使う40代のワーママはこう証言する。
同薬は今や世界的に肥満治療薬として使用されているが、日本では糖尿病治療薬としては保険適用で、ダイエット目的は自由診療での処方になる。この女性の2か月の治療費は5万円だった。
日本で同薬がはやり始めたのは5年ほど前。今では全国的に美容系以外でもさまざまなクリニックで扱うようになり、オンライン診療で簡単に処方してくれるので、ユーザーも数多い。
こうしたなか、今、同薬の闇市場が存在しているという。中国事情に詳しいライターの広瀬大介氏は言う。
「知人の中国人留学生が一時帰国するので空港まで送りに行ったんです。彼はバッグに大量のGLP-1薬と保冷剤を詰め込んでいて『上海の税関を通れるか心配だ』と言うんです。中国では今この薬が大人気で、高値転売できるらしいと話していました」
自由診療ゆえに誰であっても処方してもらえる
いったい、どういうことなのか。中国SNS「小紅書」を覗いてみると、「中国語対応でマンジャロ(GLP-1薬の商品名)を処方してくれる都内クリニック一覧」という投稿をさっそく発見。
銀座や新宿などの皮膚科や内科が掲載されていた。
「アジア系、特に中国人観光客の間で、訪日時にマンジャロを購入するのがはやっているんです。自由診療なので、外国人でも簡単な問診だけで購入可能。なかには調剤薬局内で、提携する医師がオンライン診断して処方するケースもある。とにかく、これが相当儲かるようで、最近はいろんなクリニックがインバウンド向けにやっています」
こう証言するのは中国人観光ガイドだ。
「通常、1~2か月分を処方しますが、観光客には半年分やそれ以上処方するクリニックもあります。中国人観光客は訪日前に下調べし、日本でたくさん買って帰り、中国国内で転売するようです」
容量やクリニックにより違いがあるがマンジャロの価格は1か月分で約2万~5万円。中国ECサイトを覗くと、ほぼ倍の値段で売られていた。