ライター・編集者の笹間聖子さんが、誰もが知る外食チェーンの動向や新メニューの裏側を探る連載「外食ビジネスのハテナ特捜最前線」。第9回は、猫型配膳ロボットを導入したすかいらーくグループの「人とロボットの共存」戦略と、それに伴って生まれた意外な効果に迫ります。
すかいらーくグループ系列のファミリーレストランに入ると、猫型のロボットが行き来しているのを見かけるのが当たり前になった。
【画像をチェック】「しゃぶ葉」で皿を下げる猫ロボ。障害物があって動けなくなると“怒りの表情”を浮かべたり、暇になると、鼻ちょうちんを出して居眠りすることもある
「人手不足の解消に役に立っている存在」と認識していたのだが、その実態はただの省人化ツールではないという。むしろ、「多様な人材の採用拡大」という、意外な波及効果を生み出しているそうだ。
いったいなぜそのような効果が出ているのか。すかいらーくグループに取材を申し込んだところ、文書での回答を得られた。
■猫型配膳ロボット、3000台が全国で走る
すかいらーくグループでは現在、約3000台の猫型配膳ロボット「ベラボット(BellaBot)」を約2100店舗に導入。各店舗でいうと1〜2台、広い店舗では3台が稼働している。
【画像】「しゃぶ葉」で皿を下げる猫ロボ。障害物があって動けなくなると“怒りの表情”を浮かべたり、暇になると“居眠り”することも
配膳ロボットの仕事内容は、おもに厨房からテーブルへの料理の配膳だ。同グループのしゃぶしゃぶ食べ放題の店「しゃぶ葉」では、食べ終わった皿を下げる役割も担っている。
猫型ロボットが運べる重さは最大40kgまで。裏側が全4段の棚構造になっており、各棚10kgまでのせられる。実に頼もしい存在だ。さらに驚くべきことに、配膳ロボット1台の1日あたりの平均走行距離は、4kmに達するという。多い店舗では1日に22km走行した実績もある。
この距離の長さは、フロアスタッフが1日に歩く距離の負担軽減につながっている。グループに約3000台を設置して以降、スタッフの勤務中の歩行数が42%も減少。同時に、料理を運ぶ際の腕の負担が軽減される効果も得られたそうだ。
■労働に投資しても人件費率は低下、収益アップに
しかし、すかいらーくグループのロボット導入の狙いは、単なる「従業員の負担軽減」や「省人化」だけにはとどまらない。
「ロボットを導入することで人を減らすのではなく、人とロボットとの協働により、お客様満足度と従業員の働きやすい環境づくりを実現しています」と、同グループの広報担当者は語る。