見慣れたチェーン店が突然なくなるーー。
そんな経験をしたことはないだろうか。チェーン店なんてじっくりは見ないけれど、視界のどこかに入ってくる。それが、いつの間にか消えてしまう。静かに。そして、消えてから「ああ、なくなっちゃったんだな」と気付く。
そんな憂き目にあるのが、ラーメンチェーン「天下一品」だ。
「天一」という愛称で呼ばれるこの店が、6月末に大量閉店する。閉まるのは主に東京を中心とした10店舗。実は昨年にも天一は都内で多くの店舗を閉めており、2年連続での閉店ラッシュといったところだ。
このニュースは瞬く間に広がり、その閉店を惜しむ声が続出した。その理由についてもさまざま指摘され、いわば「天一騒動」の様相を呈している。
どうしてこのようなことになったのか。この「天一騒動」で重要なのが「フランチャイズ」という視点。そのポイントから騒動を振り返り、それが意味するところを考えたい。
■久々の天下一品は変わらなかった
そもそも、閉店する店舗はどのような状況なのだろう。私は閉店が予定されている「池袋西口店」を訪れることにした。池袋の歓楽街のど真ん中にある。
中に入るとカウンター席へ案内される。予定が合わず、昼食でも夕食でもない絶妙な時間に訪れたのだが、店には人がそこそこいる。見ると全員が男性の1人客で、黙々と目の前の丼に向き合っている。
注文はスマホを使ったセルフオーダー。ここでラーメンの種類や量、麺の硬さ、トッピングなどを選んでいく。
■久しぶりに味わってみると…
頼んだのは名物の「こってりラーメン」。税込940円。
昔よりは少し高くなったかな? と思いつつ、まあ今は「ラーメン1000円の壁」なんて言葉もあるし、このインフレ時代にありがたい存在であることには変わりないよな……などと、いじいじ思いながらラーメンがやってくるのを待つ。
周りを見渡すと「6月30日に閉店します」という張り紙が。途中、店に入ってきたおじさんが「ここ、閉まるって聞いたけど、本当?」と店員さんに聞く。アルバイトらしき店員さんは「ああ、そうです」と(自分だって深い事情はわからないんだよな……)とでもいう感じ。
おじさんはSNSを見てやってきたのかもしれない。天下一品は根強いファンも多く、都内の大量閉店はショッキングな出来事だったのだろう。
ラーメンが到着。鶏ガラや野菜をじっくり煮込んだ独特のスープに細麺が絡む。とんこつラーメンとも家系ともまた違う、ペーストのようなスープがクセになる。久々に食べたが、またハマりそう(家の近くからはなくなるのに)。