今年1月、群馬県内の中学校で男性教師(事件当時68)が女子生徒(当時13)にキスをしたり、身体を触ったりする事件が起きた。女子生徒は特定の場面で話すことができなくなる「場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)」で、学校では筆談でコミュニケーションを取っていた。26日、不同意わいせつの罪に問われた男性教師に、懲役2年6カ月(執行猶予4年)の判決が言い渡された。
「学校は被害をなかったことにしたかったのではないか」
そう話す女子生徒の母親は、事件後の学校の対応に不信感を抱いた。校長から被害を「口外しないでほしい」と言われたという。
学校で起きる性暴力事件。被害者を守るため、必要な対応とは?
(テレ朝news 笠井理沙 今井友理)
※被害者の特定を避けるため、自治体や学校、被告の名前を伏せて報じています。
※性暴力被害の実態を伝えるため、被害の詳細について触れています。フラッシュバックなど症状のある方はご留意ください。
■きっかけは「勘違い」 男性教師が語った犯行の理由
不同意わいせつの罪に問われた男性教師(当時68)は、定年退職後、学習支援員として群馬県内の中学校に勤務していた。理科の授業を担当し、女子生徒(当時13)にも指導していた。
判決によると、事件があったのは今年1月17日と22日。中学校の理科準備室と被服準備室で、女子生徒にキスをしたり、胸や下半身を触ったりした。いずれの日も、別の教師が男性教師と女子生徒が2人でいるところを目撃し、事件が発覚した。2月、男性教師は不同意わいせつ容疑で逮捕・起訴され、懲戒免職処分となった。
4月に開かれた初公判で、男性教師は罪を認め、被害を受けた女子生徒とその家族に「大変すまないことをした」と謝罪した。犯行のきっかけについて、男性は「勘違いをした」と説明した。
男性教師
「『おはよう』とあいさつをして、女子生徒と顔と顔が近づき、女子生徒が私の頬にチュッとキスをした。その日は何もなく終わったが、後日、あいさつをして、またキスをされて勘違いをした。それがあの子にとってのあいさつなのだと思い、キスを返した」
裁判の中で、去年11月ごろから繰り返し女子生徒にキスをしたり、身体を触ったりしたことを認めた。自分の授業を熱心に聞く女子生徒を「かわいらしい」と思うようになり、勘違いから始まったキスがエスカレート、胸や下半身を触るようになったと説明した。
女子生徒は1学期ごろから被害を受けていて、口止めをされたと主張。被害者参加制度を利用して法廷に立った被害者の代理人弁護士は、男性教師と女子生徒には大きな身長差があり、女子生徒がいきなりキスをしたなどありえないと指摘した。
一方、男性教師は教師という優位な立場を利用したことや、口止めをしたことは否定した。代理人弁護士の質問に、男性教師はこう答えた。
被害者の代理人弁護士
「被害者がコミュニケーションに問題を抱えていることは知っている?」
男性教師
「はい」
被害者の代理人弁護士
「だからバレないと思った?」
男性教師
「そうではないです」
被害者の代理人弁護士
「手なづけようとしたのでは?」
男性教師
「そういう表現は間違いです。女子生徒は他の生徒から声をかけられないので、朝も下校の時も積極的に声をかけました」
被害者の代理人弁護士
「そういうふうにすれば信頼すると思った?」
男性教師
「授業やあいさつで顔を見て、熱心に取り組んでいるので、信頼されていると思った」
「女子生徒と離れる時間をつくらない限り、やってしまったかもしれない」と自分で犯行を止めることができなかったと語った。
26日の判決で、前橋地裁太田支部の伊藤愉理子裁判官は「教育現場であるまじき行為で卑劣な犯行と言う他ない」とした一方、男性教師と女子生徒の母親の間で民事上の和解が成立し、男性教師が懲戒免職され社会的な制裁を受けているとして、懲役2年6カ月(執行猶予4年)の判決を言い渡した。