日産自動車は2025年3月、4月1日付で内田誠社長兼CEOが退任し、後任として現在の商品企画責任者を務めるイヴァン・エスピノーサ氏が就任する人事を発表しました。これは近年の業績低迷やホンダとの経営統合に向けた協議がまとまらなかったことを受けた事実上のトップ交代と見られており、新たな経営体制のもと、日産の厳しい再建が急務となります。
日産経営トップ交代の背景と新リーダー
今回の社長交代は、日産の業績悪化に対する経営責任を問われた内田氏の退任という側面が強いと分析されています。特に、自動車業界の再編が加速する中で進められていたホンダとの経営統合に関する協議が決裂したことが、トップ交代の決定打となった模様です。
新社長に選ばれたイヴァン・エスピノーサ氏は現在46歳。日産の役員陣では最も若い世代のリーダーです。彼はメキシコ日産でキャリアをスタートさせ、タイ日産など海外子会社での経験を積んだ後、2016年に日産本社に入社しました。本社では商品企画部門で頭角を現し、チーフ プランニング オフィサー(CPLO)として、将来の日産車ラインナップ戦略を担ってきました。
日産の新しい社長に就任したイヴァン・エスピノーサ氏
同時進行の役員人事と経営刷新の狙い
今回の内田社長退任と同時に、3名の副社長や、経営企画担当の渡部英朗氏を含む主要な役員も退任します。この大規模な役員人事は、エスピノーサ氏を中心とする新たな経営体制への移行を明確にし、長らくゴーン体制末期からの影響を引きずってきた状況からの脱却を図る強い意思の表れと見られます。46歳という若さでのトップ就任は、スピード感を重視した経営執行への期待を示すものとも捉えられます。
内田体制の評価と残された課題
約5年間にわたる内田氏を中心とした集団指導体制は、当初から副COOの離脱、そして2023年にはグプタCOOの突然の退任など、体制の安定性を欠く場面が見られました。結果として、ゴーン時代に進められた無理なグローバル拡大路線の「負の遺産」を完全に解消し、日産ブランドの信頼回復や業績のV字回復を達成するには至らなかったのが実情です。
ガバナンスへの懸念と今後の展望
経営陣の一新は図られるものの、仏政府の影響下にあるルノーとの関係性や、ゴーン時代に招聘された一部の社外取締役が依然として残る取締役会に対して、さらなる刷新と真のガバナンス強化を求める声は自動車業界内外から根強く聞かれます。
2025年4月からの新年度、エスピノーサ氏率いる日産新体制は極めて厳しい船出を迎えます。すでに中間期での無配発表、そして今通期での赤字転落が見込まれるなど、財務状況は予断を許さない状況です。日産がこの難局を自力で乗り越え、再生を果たすことができるのか、あるいはホンダとの再度の提携協議や、台湾の鴻海(ホンハイ)などの他業種テック企業との協業を通じて生き残りと成長を目指すのか、現時点での見通しは不透明です。
エスピノーサ新社長は、熱心な日産ファンであり、愛車にフェアレディZを所有する「カーガイ」としても知られています。新たなリーダーシップのもと、特に自身の得意分野である新車企画などをテコに、停滞気味だった経営の執行にスピード感をもたらし、難局を打開できるか。その手腕に注目が集まります。
出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/c3849f88d544b9f0ea886d5436625f401fed3958