国民民主党は6月11日の両院議員総会で、参議院選挙での立候補を予定していた山尾志桜里氏の公認取り下げを正式に決定した。この決定は、山尾氏が前日の10日に行った記者会見が、過去の不倫報道などに関する釈明として不十分だと党内外から見なされたことを受けたものだ。会見では説明を避ける姿勢が目立ち、報道陣から質問が相次いだ。山尾氏の擁立が報じられた直後に党の支持率が急落した、いわゆる「山尾ショック」は、この会見でも収まる気配を見せず、党内から公認取り消しを求める声が噴出していた。
公認取り消しの背景と党の説明
両院議員総会後、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、山尾氏の公認取り消しについて記者団に説明した。「国民民主党を支える全ての都道府県連、全国の地方自治体議員から、同様に山尾さんの公認は見送ってほしいという声がありました」と述べ、幅広い層からの要望があったことを強調した。また、「山尾さんにも弁明の機会を与えるべきだという声もあり、昨日、山尾さんには会見を行っていただきましたが、多くの皆さんから、疑問を払拭する会見ではなかったという声があり、本日の両院議員懇談会においても、来たる参議院選挙で、党が一丸となって戦う環境を整えるためには、山尾さんの公認は見送ってほしいという声があった」と説明し、会見が党内の懸念を解消できなかったことが決定打となったことを示唆した。
党内からの率直な声
同党のある国会議員は、今回の決定について率直な感想を漏らした。「これで党として結束できると思う。ただこうなるなら、最初から山尾さんを誘うべきではなかった。あいまいな対応がお互いの悲劇だった」と語り、党が山尾氏の擁立を検討した当初からの対応に疑問を呈した。
山尾志桜里氏の記者会見詳細
山尾志桜里氏は、6月10日の会見冒頭、まず自身の過去の疑惑について言及した。8年前の2017年には、妻子ある男性との不倫報道が週刊文春によってなされていた。当時、山尾氏は会見で「男女の関係はない」と否定したが、記者からの質問を一切受け付けずに会見を打ち切り、批判を浴びた経緯がある。また、これ以前にも、政治資金からの高額なガソリン代不正支給問題や、JRの議員パス私的利用疑惑なども報じられていた。
記者会見で説明する山尾志桜里氏
「未熟だった」と謝罪、しかし…
山尾氏は今回の会見で、「8年前の、自分の行動、ご指摘を受けた際の対応は、きわめて未熟だったと反省している。8年前の自分にはおごりがあったと思います。8年前の自分の行動と対応の未熟さを、心からお詫び申し上げます」と述べ、過去の自身の姿勢を謝罪した。報道された男性との現在の関係については、「現在、私生活、仕事の面で特段の交流はございません」と説明した。
疑惑の中心への言及避ける
しかし、8年前に否定した不倫の事実関係を認めるのかという核心的な質問に対しては、「8年前に言ったことは事実です」と繰り返す一方で、「当時お話した以上のことを、新しく言葉を紡ぐことをどうかご容赦いただきたい。新たに何かお話しすれば、様々なご迷惑をおかけすることもあります」と述べ、具体的な説明を一切避けた。
2021年には、週刊文春が山尾氏との交際疑惑が報じられた男性の元妻が自ら命を絶ったと報じている。この点について問われると、山尾氏は「私は事情を存じ上げません。その中で、私が思いを伝えることはできません。控えさせてください」と答えるのみだった。さらに、「元妻のお子さんが遺児となっているが、お子さんのことを考えたことがあるか」という問いにも、「控えさせてください」と述べるにとどまり、質問に正面から向き合うことはなかった。
今回の国民民主党の決定は、山尾志桜里氏の過去に関する疑惑に対し、本人が行った会見での釈明が不十分であり、党として参議院選挙を戦う上で党内結束を阻害すると判断された結果と言える。未だ拭いきれない過去の影が、「山尾ショック」という形で党の支持率に影響を与え、最終的に公認取り消しという事態を招いた。