永田町のインサイド情報によると、石破茂首相が参院選を前に消費税減税という切り札を封印した背景には、自民党内の複雑な事情と主要閣僚からの牽制があったことが明らかになった。この政策転換は、夏の参議院選挙を戦う自民党にどのような影響を与えるのか、政界に波紋を広げている。
党首討論での攻防：減税か、財政規律か
5月21日、参議院第一委員会室で行われた党首討論において、立憲民主党代表の野田佳彦氏は、食料品に限定した消費税ゼロを強く訴えた。これに対し、石破首相は「期限と財源を明示しない減税は無責任」と批判。しかし、本来であればこの二人の立ち位置は逆だった。野田氏は2012年に首相として消費税増税を含む社会保障と税の一体改革を推進した財政規律重視派。一方、石破首相は4月半ばまで、「物価高には減税が最も効果的」「食料品などの軽減税率を5％にすべきだ」と消費税減税を検討している姿勢を示していた。
永田町の舞台裏：減税封じ込めの決定会合
石破首相の減税構想は、早々に封じ込められた形だ。4月20日、東京・赤坂の衆議院議員宿舎に石破首相、森山裕幹事長、林芳正官房長官、加藤勝信財務相、小野寺五典政調会長、渡海紀三朗前政調会長、小泉進次郎前選対委員長ら、政権を支える主要メンバーが集結。この席で、小野寺氏は「コメをはじめ食料品価格はまもなく下がり始める」との見通しを示し、林官房長官は「参院選は公約と骨太の方針で勝負すべきで、連休明けに経済対策を打つのは意味がない」と述べ、石破首相の消費税減税論に暗に釘を刺した。この会合で石破首相はほとんど発言せず、以降、消費税減税について言及することはなくなった。
自民党 高市早苗氏
森山幹事長との確認：「減税はしませんよね」
連休明けの5月8日には、都内の日本料理店で森山幹事長が石破首相に直接「総理、減税はしませんよね」と確認。石破首相は一拍おいて、「政権与党として無責任なことはできない」と応じつつも、「ただ党内で声高に減税を言う連中がね…」と党内の減税論者への不満を漏らしたという。これを受け、党税制調査会のメンバーでもある森山氏は、税調で消費税に関する勉強会を開き、党内の不満の「ガス抜き」を図ることを提案。石破首相もこれを了承した。
結論
これらの動きは、石破首相が参院選勝利のために温めていた消費税減税という秘策を、党内や主要閣僚からの現実論や選挙戦略論によって断念せざるを得なかった過程を示唆している。財政規律や選挙前の政策混乱を避けたいという思惑が背景にあるが、物価高に苦しむ国民へのアピールを欠く形での選挙戦となる可能性も孕んでいる。自民党がこの政策スタンスで参院選を勝ち抜けるか、今後の党内の動向と世論の反応が注目される。
参考文献
- 月刊文藝春秋「赤坂太郎」
