「息子が結婚相談サービスに370万円」は詐欺か? 交際あっせん詐欺の現状と手口

「素敵な人と出会いたい」という願いは多くの人が抱くものですが、日々の生活の中で出会いの機会が限られていたり、マッチングアプリで成果が出なかったり、あるいは結婚相談所への一歩を踏み出すことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。こうした状況で、もし息子さんから「結婚相談サービスに370万円を支払うことになった」と聞かされたら、それが本当に適切な支出なのか、あるいは何らかの詐欺ではないかと不安になるのは当然です。残念ながら、「素敵な出会い」を求める気持ちにつけ込み、高額な金銭を要求する詐欺の手口が存在します。

拡大する交際あっせん詐欺の被害実態

警察庁が公表している特殊詐欺対策の情報によると、令和6年中に特殊詐欺と認知された件数は2万1043件、合計被害額は721億7727万5370円に上ります。特に東京都では件数が多く、3494件発生し、被害額は152億9910万円となっています。特殊詐欺の手口の内訳を見ると、令和6年には交際あっせん詐欺は2件でしたが、被害額は約691万円発生しています。さらに、令和7年の4月末時点ではすでに5件発生しており、被害額は約2744万円と急増しています。これを1件当たりの平均被害額に換算すると、令和6年が約345万円であるのに対し、令和7年は約548万円となり、被害金額が大規模化している傾向が見られます。息子さんが支払ったという370万円という金額は、まさにこの手口による1件当たりの平均被害額の範囲内に収まっており、詐欺の可能性を疑う根拠となり得ます。

交際あっせん詐欺の典型的な手口とは

交際あっせん詐欺とは、雑誌やインターネット上の広告、メールなどに記載された「女性紹介」(男性紹介の場合もあります)といった案内を通じて接触してきた人に対し、会員登録料や保証料など、様々な名目で金銭をだまし取る、あるいは脅し取る手口です。手口としては、まず案内に申し込んできた人に対し、「会員登録をすれば素敵な異性を紹介する」と持ちかけ、「登録には会員登録料として数十万円が必要です」などと金銭を要求します。出会いを求めている申込者は、期待を胸に登録料を支払ってしまうことが多いようです。

結婚相談サービスに高額請求され困惑する人物イメージ。交際あっせん詐欺の危険性を示す。結婚相談サービスに高額請求され困惑する人物イメージ。交際あっせん詐欺の危険性を示す。

無事に登録を済ませ、「素敵な異性と会うことができた」と喜んでいる申込者に対して、業者はさらに畳みかけます。「紹介した相手の異性があなたを非常に気に入っている」「この関係を維持するためには保証金が必要です」などと言葉巧みに金銭を要求します。申込者は「せっかくの良い機会を逃したくない」「他の人に取られたくない」という心理につけ込まれ、言われるがままにさらに高額な保証金を支払ってしまうというケースが多く報告されています。このように、段階を経て様々な名目で金銭を繰り返し要求し、最終的に多額の金銭をだまし取ります。息子さんのケースで370万円という高額な支払いが発生している状況は、このような複数回にわたる金銭要求の末に生じた被害額である可能性が考えられます。

まとめ

交際あっせん詐欺は、「素敵な出会い」を求める人々の純粋な気持ちにつけ込む悪質な詐欺です。警察庁や東京都の統計を見ても、1件当たりの被害額が増加しており、高額な金銭がだまし取られるケースが後を絶ちません。会員登録料や保証金など、様々な名目で高額な金銭を要求された場合は、詐欺である可能性を強く疑うべきです。特に、息子さんのように一度に多額の金銭を支払っている状況は、上記の典型的な手口によって段階的に被害が拡大した結果であることも考えられます。このような状況に直面した場合は、まずは冷静になり、早めに警察などの公的機関や、消費生活センターに相談することが極めて重要です。


参考情報:

  • 警察庁 特殊詐欺対策ページ
  • 東京都 都民安全総合対策本部ホームページ