モサド、イラン国内で秘密作戦遂行 大規模空爆の成功を裏で支える

イスラエルがかつてない規模の大規模爆撃をイランの核施設と軍上層部に対して敢行する直前、イスラエルの諜報員たちは既に敵国領土深くに潜入していた。イスラエルの治安当局筋によれば、同国の情報機関モサドはこの攻撃に先立ち、秘密裏にイラン国内へ武器を運び込んでいたという。これらの武器は、イランの防衛網を内部から標的とする計画のために用いられた。

当局者らが明らかにしたところによると、イスラエルは自爆型ドローン(無人機)の発射拠点をイラン国内に設置した。これらのドローンはその後、首都テヘラン近郊に配備されていたミサイル発射装置を狙うために使用されたという。同様に、精密兵器もイラン国内に持ち込まれ、地対空ミサイルを標的とするために活用された。こうした緻密な事前工作が功を奏し、イスラエル空軍は13日未明、200機を超える航空機による大規模な空爆作戦を遂行することが可能となったのである。

イラン防衛網の無力化と作戦の成功

イランの防衛能力を無力化するためのイスラエルの計画は、成功したと見られている。イスラエルは、第一波の空爆に参加した全航空機が無事に帰還したと発表した。これは、数百キロメートル離れた敵国の制空権を、イスラエルが一時的ではあるが確保したことを示唆していると解釈できる。

モサドの深い潜入能力を示す証拠

モサドがイラン国内で収集した極めて価値の高い情報も、イスラエル空軍がイランの司令官や主要な科学者といった重要人物を正確に標的とすることを可能にした。

非常に異例な対応として、モサドは今回の秘密作戦の一部を捉えた映像を公開した。公開された映像には、複数の自爆型ドローンが、無防備な状態にあると見られるミサイル発射装置に対して攻撃を仕掛ける様子が映し出されている。
モサド作戦、ドローンがイランのミサイル発射装置を攻撃する様子モサド作戦、ドローンがイランのミサイル発射装置を攻撃する様子

今回の作戦は、モサドを含むイスラエルの情報機関が、イランの最も厳重に警戒されている機密領域に対し、どれほど深く潜入しているかを示す最新の事例となった。この作戦を通じて、モサドはイラン国内においてほぼ阻止不可能な勢力であるという印象を与えている。具体的には、イランの最高位の当局者や、最も機微な施設の一部をも攻撃する能力を備えているかのように映し出されているのだ。

米シンクタンク、ワシントン近東政策研究所の上級研究員で、イラン関連情報を扱うニュースレターの編集も務めるホリー・ダグレス氏は、「モサドは何年もの間、イランを自分たちの遊び場のように扱ってきた」と指摘する。同氏はさらに、「トップレベルの核科学者の暗殺からイランの核施設の破壊に至るまで、イスラエルはこの『影の戦争』において常に優位に立っていることを何度も証明してきた。その戦争は、2024年4月に最初の応酬が起きたことをきっかけに、もはや公然と繰り広げられるようになった」と述べている。

イスラエルの安全保障部門の情報筋が明かしたところによると、今回の作戦を遂行するためには、特殊部隊がテヘランやイラン各地の深部へ侵入し、イランの治安機関や情報機関に一切察知されることなく活動する必要があった。イスラエル空軍による攻撃開始と同時に、モサドのチームはイランの防空システムや弾道ミサイル、そしてミサイル発射装置を標的としたという。

別の情報筋は、こうしたモサドによる大規模な秘密作戦が、数年という長期間にわたって周到に準備されてきた計画であったことを明らかにした。この作戦は、イランの高官や重要人物の暗殺とも関連している可能性があるとされている。

イラン側は、2010年代初頭から繰り返し、イスラエルが自国の核科学者に対する一連の暗殺作戦を実行していると非難してきた。2007年から2012年にかけて、イスラエルは5件の暗殺を秘密裏に実行したと広く見られており、その現場のほぼ全てがテヘラン市内で、遠隔操作による爆弾や銃器が使用されたと伝えられている。

まとめ

今回のイスラエルによるイランへの大規模空爆は、その背後にモサドによる前例のない秘密作戦が存在したことが明らかになった。モサドは事前にイラン国内に武器やドローンを持ち込み、防衛網の無力化、ミサイル発射装置や地対空ミサイルの標的化を行い、イスラエル空軍の作戦成功に決定的な役割を果たした。作戦の一部映像を異例にも公開したことは、モサドのイラン国内への深い潜入能力と、ほぼ阻止不可能な執行能力を世界に示威する意図があったとみられる。長年にわたる「影の戦争」が表面化する中、モサドの活動は今後も中東情勢の鍵を握る重要な要素となるだろう。

参考資料

[CNN] イスラエル、イラン国内で大規模空爆前に秘密作戦=情報筋
Yahoo!ニュース