【ロサンゼルス=金子靖志】トランプ米政権による移民取り締まり強化に対する抗議デモが、日本食店などが多く連なるロサンゼルスの日本人街「リトルトーキョー」に深刻な打撃を与えている。治安の悪化に加えて外出禁止の対象区域にも含まれ、客足の減少に拍車がかかっている。
抗議が続くのは、大リーグ・ドジャースのスタジアムにも近いダウンタウン地区で、リトルトーキョーはこの一角にある。市は10日以降、午後8時から翌朝6時にかけて外出禁止令を出しており、多くの店が夕方には閉店を強いられている。
「売り上げは5分の1に落ちた」。全米で最も古いラーメン店として知られる「こう楽」オーナーの徳田護さん(47)は声を落とす。暴徒によるスプレーの落書きを制止しようとし、顔に吹きかけられそうになった。「平和的なデモが多いのに、一部の過激な行動が台無しにしている」と憤る。
リトルトーキョーは戦後、日系人が築いた全米最大級の日本人街で、飲食を中心に店舗数は数百に上る。暴徒化した集団によるガラスの破損や盗難被害も相次いでおり、防犯団体のブライアン・キトウ会長(68)は「夜になると雰囲気が一変し、店側も警戒を強めている」と語る。ほとんどの店が被害を防ごうと窓に板を張っている状況だ。
日系ホテル「都ホテルロサンゼルス」では6月以降キャンセルが数百件に達し、柚原章総支配人(72)は「稼働率は前年同月比で半減し、非常に厳しい。一日も早く事態が収まってほしい」と述べた。