イスラエルとイランの交戦が続く中、イスラエルに攻撃されたイランが報復としてホルムズ海峡を封鎖する「最悪のシナリオ」がくすぶっている。日本は原油輸入の9割以上を中東に依存しており、その「オイルロード」の要衝がイランに面するホルムズ海峡だ。万一、封鎖されれば、日本のGDP(国内総生産)が3%押し下げされるとの試算もあり、日本の産業や国民生活への影響は避けられない。
ホルムズ海峡は、世界の原油供給の約2割にあたる日量約2千万バレルが通過し、日本へのタンカーの8割が通るとされる。
イスラエルのイラン攻撃後、海峡封鎖の懸念などから原油価格は急騰。ニューヨーク原油市場では米国産標準油種(WTI)の先物価格の終値は、攻撃の報道前の1バレル=68ドル台から攻撃後に一時77ドル台まで上昇した。
日本総合研究所の栂野裕貴研究員は、海峡封鎖された場合、原油価格は1バレル=140ドルまで急騰すると試算。日本が中東からの化石燃料の輸入が途絶えれば、エネルギーや製造業を中心に減産圧力が高まり、GDPが3%弱下押しされる可能性があると指摘する。
海峡封鎖はイランにとって、主要な輸出先の中国から反発を招くだけでなく、他の中東諸国との関係悪化にもつながりかねず、実施の可能性は低いとみる向きが強い。
だが、米国がイラン攻撃を検討するなど、緊急事態にあり、従来よりも封鎖の可能性は高まっている。栂野氏は「価格急騰の影響を受ける欧州各国などから、イスラエル・米国に対し、攻撃をやめるように働きかけてもらうことが狙いとなるだろう」と説明する。(織田淳嗣)