【ワシントン=淵上隆悠】米国のトランプ大統領は20日、イランの核開発の進行状況を巡り、米政府内の情報機関を統括するトゥルシー・ギャバード国家情報長官の分析が誤っていると主張した。米大統領が自国の情報機関の評価を公に否定するのは異例だ。
ギャバード氏は3月の上院公聴会で「情報機関はイランが核兵器を製造していないと評価している」と証言し、「最高指導者のハメネイ師は2003年に停止した核兵器計画の再開を許可していない」と述べた。
トランプ氏は20日、イスラエルと交戦するイランが早ければ数週間で核兵器を持てるようになるとの認識を示し、阻止する必要性を改めて強調した。記者団からギャバード氏の発言と矛盾している点を突かれると、「彼女は間違えている」と明言した。トランプ氏は17日にも同様の指摘を受けたが、「彼女が何を言ったかはどうでもいい」と一蹴(いっしゅう)した。
米国は03年、「イラクが大量破壊兵器を隠している」との米情報機関の分析を根拠にイラク戦争を始めたが、分析は誤りだったと判明し、戦いは泥沼化した。イランの核開発を巡り、トランプ氏は主張の根拠を明確にしていない。参戦の判断には機密情報が大きく影響するだけに、「イラク戦争の亡霊が漂っている」(英BBC)と報じられている。