ドナルド・トランプ米大統領(当時)は、イランの核施設への攻撃に米空軍のステルス爆撃機B-2が投入されたことを明らかにしました。この情報は、世界の政治情勢に関心を持つ多くの人々の注目を集めています。
B-2爆撃機「スピリット」とは
「スピリット」の愛称で知られるB-2は、米空軍が運用する最上位の戦略爆撃機です。その最大の特徴は、全翼機というユニークな形状と、複合材・特殊塗装を組み合わせた高度なステルス性能にあります。この能力により、B-2は「従来は突破が困難だった防空網をも通過し、世界のあらゆる目標に対し短時間で強力な火力を投射できる」とされています。
米領グアム、アンダーセン空軍基地の滑走路を走行するB-2ステルス爆撃機
驚異的な能力とスペック
4基のエンジンを搭載し、乗員は2人。最大積載量は4万ポンド(約18トン)に達します。特に、空中給油を受けることで、事実上無制限の行動半径を持つことが可能です。これは、遠距離の標的にも柔軟に対応できることを意味します。
B-2の実戦投入と配備状況
B-2の初飛行は1989年に行われました。その10年後、1999年の北大西洋条約機構(NATO)主導によるコソボ人道危機介入「アライド・フォース作戦」で初めて実戦に投入されました。この作戦では、米ミズーリ州の基地からノンストップで飛行し、セルビアの標的を攻撃しました。2001年10月には、「不朽の自由作戦」の初期段階で、さらに長距離のアフガニスタンの目標を攻撃する任務にも就いています。最近では、インド洋のディエゴガルシア島から発進し、中東イエメンの反政府武装組織フーシの標的を攻撃した事例も報告されています。
現在、米空軍が保有するB-2はわずか20機のみで、全機がミズーリ州のホワイトマン空軍基地に配備されています。1機当たりの取得価格は約20億ドル(約2900億円)と非常に高価です。
イラン攻撃で使用された「バンカーバスター」
米東部時間21日夜に行われたイランの核施設攻撃では、「バンカーバスター」として広く知られるGBU-57A/B大型貫通爆弾(MOP)が使用されたと、作戦に関与した情報筋2人が明らかにしました。米空軍の説明によると、MOPは6000ポンドの爆薬を内蔵し、総重量は3万ポンドに及びます。「強固に防護された施設内に存在する敵の大量破壊兵器に到達し、これを破壊するために設計された」とされるこの強力な爆弾を搭載・運用できる米軍唯一の航空機が、このB-2爆撃機です。
今回のイラン核施設への攻撃におけるB-2爆撃機とGBU-57A/B爆弾の使用は、米軍が高度なステルス技術と精密攻撃能力を組み合わせることで、遠距離の重要標的を攻撃できる能力を改めて示した形です。