カナダで行われた日米首脳会談では、自動車関税を含むトランプ関税についての協議は難航し、25%の自動車関税の行方は依然として不透明です。日本の基幹産業である自動車産業は、米国市場での関税問題と、世界最大の中国市場での激化する競争、特にEVシフトへの対応で、現在「厳しすぎる現実」に直面しています。日本の自動車メーカーは、かつてない試練を迎えています。
米国市場での逆風:トランプ関税の影
自動車産業は、関連産業を含めると500万人以上の雇用を支え、日本の輸出全体の約2割、対米輸出の約3割を占める日本の大黒柱です。もし25%という高率のトランプ関税が課されれば、車両および自動車部品の対米輸出は金額ベースで大幅な減少が避けられません。既に2025年5月には減少が見られます。この状況が続けば、日本の自動車メーカーは米国での現地生産をさらに加速せざるを得ず、これは日本経済全体に大きな打撃となるでしょう。
経済評論家 古賀茂明氏
中国市場でのさらなる試練:EV競争の敗北
世界最大の自動車市場である中国は、日系メーカーにとって米国市場以上ともいえる厳しい試練の場です。日系メーカーが巻き返しを図るとの楽観論もありますが、実情は異なります。中国での日本車シェアは低下の一途をたどり、トヨタ、日産、ホンダの3社合計販売は2021年から3割減少の330万台となり、シェアは同時期に20.6%から11.2%へ半減近く落ち込みました。この主要因は、中国で急成長するEV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)の分野で、テスラや地元メーカーに圧倒的な差をつけられていることにあります。
競争力を増す中国EV市場の車両イメージ
現地で見た厳しい現実:杭州のモーターショーとタクシー運転手の声
2024年6月上旬に中国の杭州を訪れモーターショーを視察した際、BYD、ファーウェイ、シャオミなど中国勢やテスラのブースが賑わう一方、レクサスを含む日系メーカーのブースは閑散としていました。杭州市内でわずかにトヨタのEV、bZ3タクシーを見かけましたが、同伴した中国人からは「評判が今ひとつ」との声を聞きました。実際にbZ3タクシーの運転手に話を聞くと、彼の不満は止まりませんでした。彼は、走行性能自体はともかく、カタログ値より短い実際の航続距離、そしてナビを含む車載システムが全く使い物にならないこと、内装の質素さなどに非常に不満を感じていると述べました。同業者の間でも同様の意見が多いようで、「こんな車を作った人間は非常識だ」と厳しい言葉を投げかけました。
結論
このように、日本の自動車産業は米国市場での関税リスクに加え、世界最大の中国市場では特にEV・PHV分野での競争力不足という極めて厳しい現実に直面しています。中国市場での苦戦は、日系メーカーにとって今後の行方を左右する重大な課題であり、従来の戦略では対応できない状況にあることを示しています。
[参照] Yahoo!ニュース (AERA dot.配信)