皇位継承議論、愛子天皇実現への緊急提言:君塚直隆氏が語る今こそ動くべき理由

読売新聞が一面で掲載した「皇統の安定 現実策を」(5月15日付)という提言は、皇室典範改正による女性・女系天皇容認に踏み込み、大きな注目を集めました。しかし、政界では、自民党の麻生太郎氏と立憲民主党の野田佳彦氏の意見が対立し、今国会での議論とりまとめは見送られています。「実現するなら今しかない」と訴える政治学者の君塚直隆氏は、愛子天皇の誕生を願う立場から緊急提言を行います。

皇位継承について緊急提言を行う政治学者の君塚直隆氏皇位継承について緊急提言を行う政治学者の君塚直隆氏

君塚氏の考えは、2021年の政府有識者会議での回答から一貫しており、内親王や女王といった女性皇族にも皇位継承資格を与え、その場合の順位を「絶対的長子相続制」にすべきだというものです。

欧州王室に学ぶ「絶対的長子相続制」

欧州では絶対的長子相続制がすでに一般的に受け入れられています。かつては男子のみ、あるいは男子優先の王位継承制でしたが、第二次世界大戦後に男女平等の意識が高まり、国民の声が政治を動かして憲法が改正され、絶対的長子相続が認められていきました。1979年のスウェーデンを皮切りに、ノルウェー、ベルギー、オランダなどが追随し、近年ではデンマーク(2009年)、ルクセンブルク(2011年)、イギリス(2013年)も同様の改正を行っています。スペインはまだ男子優先ですが、現在の皇太子は女性であるレオノール王女です。

日本の現状と国民の声の弱さ

第二次大戦の苦難を共に乗り越えた意識から、王室と国民の距離が「家族を見るように」近い欧州に比べ、残念ながら日本では国民の声がまだ弱いと君塚氏は指摘します。皇室存続のために愛子天皇を求める声も一部にとどまっています。戦前と戦後で極端に振れた歴史教育の問題や、宮内庁の情報発信不足などが要因となり、特に若い世代の多くは天皇や皇室にほとんど関心を持っていません。

皇室典範改正の議論を急ぐべき理由

小室圭さんと眞子さんの結婚が議論を呼んだのは、皇室典範第12条の皇籍離脱規定が大きく影響しています。今後、女性皇族と結婚する男性が皇族の身分を取得し、その子も皇族となる制度に改めれば、結婚前に厳格な調査が行われることになり、同様の問題は起こりにくくなるはずです。事実上の一夫一婦制となった大正天皇以降、日本で皇位の男系男子継承を維持することがいかに困難かは、欧州の事例からも明らかです。愛子さまを天皇にと望む国民が多数を占めるならば、今こそ声を上げ、皇室典範改正の議論を加速させるべき時です。

歴史的事実と改革の必要性

一部の保守派が主張する「日本は2600年続く万世一系だから特殊だ」という言説は、歴史的事実を正確に反映していません。イギリスをモデルに成立した明治以降の天皇制は、欧州の立憲君主制と本質的に全く同じです。戦後憲法における「象徴」という言葉もイギリスの考え方を取り入れています。この認識に立てば、現行の皇室典範の不備や天皇の公務のあり方、国民との距離感などの問題点も自ずと見えてきます。君塚氏は、これらの問題に対し、もっと積極的に改革を進めるべきだと提言しています。

皇位継承の安定は、日本の皇室が今後も国民と共に歩むために不可欠な課題です。君塚氏の提言する「絶対的長子相続制」の導入と皇室典範の改正は、欧州の歴史や日本の現状を踏まえれば、現実的かつ必要な選択肢と言えるでしょう。愛子天皇の誕生を望む声があるならば、議論を先送りするのではなく、今こそ国民的議論を深め、具体的な行動を起こす時が来ています。

参考文献

  • 君塚直隆 著『立憲君主制の現在』(新潮社)ほか著書多数
  • 週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号
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