大垣市の老舗製麺所『松澤製麺所』 廃業危機を乗り越えた親子二人三脚の物語

岐阜県大垣市にある創業100年を超える老舗の製麺所、「松澤製麺所」。かつて廃業の危機に瀕したこの店は、銀行員だった娘が家業を継ぎ、わずか3年で売上を5倍に回復させるなど、劇的なV字回復を遂げました。4代目の母親と娘が二人三脚で、伝統の味と技を守り続けています。この記事では、松澤製麺所の歴史、麺作りのこだわり、そして親子が困難を乗り越えた道のりをご紹介します。

松澤製麺所とは

岐阜県大垣市のJR大垣駅から南へ約500mの場所に位置する「松澤製麺所(まつざわせいめんじょ)」は、大正12年(1923年)に創業した、地域に根差した老舗の製麺所です。代々受け継がれる製法で、「きしめん」「中華麺」「そば」の3種類の麺を主に製造・販売しています。店頭での一般向け小売りも行っており、地元の多くの人々に愛されています。

岐阜県大垣市にある老舗製麺所「松澤製麺所」の店舗外観岐阜県大垣市にある老舗製麺所「松澤製麺所」の店舗外観

親子二人三脚の経営

現在、店を切り盛りしているのは、4代目の松澤明美さんとその娘の里香さんです。明美さんは長年麺作り一筋のベテランですが、かつて製麺所は廃業の危機に直面していました。そんな状況を立て直すため、都市部で銀行員として働いていた娘の里香さんが故郷に戻り、家業を継ぐことを決意しました。里香さんの参画後、3年間で売上を5倍に伸ばすなど、経営の立て直しに大きく貢献しました。

大垣市の松澤製麺所を経営する4代目の松澤明美さん(左)と娘の里香さん大垣市の松澤製麺所を経営する4代目の松澤明美さん(左)と娘の里香さん

毎朝、明美さんと里香さんは共にその日に販売する麺を作ります。使用する材料は創業当時から変わっていません。明美さんは、「毎日同じように作っても、今日は特に生地が良くて美味しいかなと思う日もある」と、麺作りの奥深さを語ります。

松澤製麺所の店頭に並べられた出来立ての生麺(きしめん、中華麺、そば)松澤製麺所の店頭に並べられた出来立ての生麺(きしめん、中華麺、そば)

伝統の麺作り

この道50年以上のベテランである4代目の明美さんが中心となり、麺作りが行われます。その日の気温や湿度によって水分量を微妙に調整し、手で生地の様子を確かめながら仕上げていくのが明美さんの長年の技です。目指すのは、「コシがあって舌触りのいい食感の麺」。これは、日々変化する環境に合わせて、熟練の勘と経験が求められる伝統の技です。

50年以上の経験を持つ4代目の松澤明美さんによる麺作り作業50年以上の経験を持つ4代目の松澤明美さんによる麺作り作業

体力のいる麺作りですが、機械のスピードを調整しながら、次々と出てくる麺を手際よく1食分に丸め、箱に詰める作業は、親子で協力して行われます。

気温や湿度に応じて水分量を調整しながら手で生地の状態を確認気温や湿度に応じて水分量を調整しながら手で生地の状態を確認機械から出てくる麺を素早く扱い箱詰めする娘の里香さん機械から出てくる麺を素早く扱い箱詰めする娘の里香さん

こだわりの生麺

松澤製麺所の麺は、どの種類も「毎日食べても飽きない味」をモットーに作られています。特に人気なのが以下の3種類です。

  • 中華麺: 特製のしょう油ベースのスープがセットになって1食200円と、大変お値打ちです。たっぷりのお湯で1分間茹でるだけで、昔ながらのラーメンが完成します。スープによく絡む縮れ麺は、一度食べたらクセになる味わいです。

    特製醤油スープでいただく松澤製麺所の昔ながらの中華麺特製醤油スープでいただく松澤製麺所の昔ながらの中華麺

  • そば: 1食250円。豊かな香りが特徴で、甘みと香りが強く、喉越しも抜群です。

    豊かな香りと抜群の喉越しが特徴の松澤製麺所のそば豊かな香りと抜群の喉越しが特徴の松澤製麺所のそば

  • 手打ちきしめん: 1食250円。ツルツルっとした食感と喉越しの良い平打ち麺です。噛んだ時のモチモチとした食感とコシが特徴です。

    ツルツルとした食感と喉越しの良い手打ちきしめんツルツルとした食感と喉越しの良い手打ちきしめん

これらの出来立ての生麺は、週に2回、店頭で直接販売されています。

注文を受けてから一つずつ丁寧に袋詰めされる出来立ての生麺注文を受けてから一つずつ丁寧に袋詰めされる出来立ての生麺

地域に愛される味

松澤製麺所の麺は、地元客から高い評価を得ています。あるお客さんは、「一度食べたら忘れられなくて定期的に来るようになった。中華麺は屋台のラーメンのようなサラッとした感じで、するするっと入る」と語ります。また別のお客さんは、「全体的にどれものど越しがいい。きしめんはモチモチしていて、噛んだ食感もコシがあって全然違う」と、麺の質を絶賛しています。

4代目の明美さんは、注文を受けてから麺を袋に詰める際、ついついサービスで多めに渡してしまうこともあるそうです。このような温かいサービスも、地域の人々に愛される理由の一つでしょう。

まとめ

廃業の危機を、娘の経営手腕と母親の熟練した麺作り技術、そして親子の絆で乗り越えた松澤製麺所。創業から100年以上変わらない材料と製法で守られてきた麺の味は、多くの地元客に支持されています。伝統を守りながらも、新たな力で時代に合わせた挑戦を続ける松澤製麺所の物語は、地域ビジネスの再生を示す希望の光と言えるでしょう。親子二人三脚で守る、大垣の老舗の味は、これからも多くの人々を魅了し続けるに違いありません。

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