今年3月に大学を卒業し、6月には認定心理士資格も取得したタレントのつるの剛士さん(50)。かつて「おバカタレント」として親しまれたつるのさんが、なぜ40代半ばというタイミングで「学び直し」を決意したのか。そして、大学での学びを通じて、彼自身の人生観や、これからの50代の過ごし方について何を感じているのか。その理由と学びの深まりについて聞きました。
44歳での短大入学と保育士資格取得の道のり
つるのさんがまず短期大学の保育学科(通信教育課程)に入学したのは、44歳のときでした。その動機は、芸能生活25周年を迎え、自身の「50代からの人生」を深く考えるようになったことにあります。人生100年時代と言われ、テレビ業界を取り巻く環境も変化する中で、これからどう生きていくべきか。5人のお子さんを育てた経験や、NHKの子育て番組の司会、子育て関連の講演など、これまで子どもに関わる仕事を多くしてきた経験から、もっと専門的な知識を身につけ、保育士資格を取得することが今後の可能性を広げると考えたのが最初のきっかけでした。
目標通り短大を卒業し、保育士資格も取得しました。コロナ禍ではありましたが、幸いにも4週間の教育実習を経験することもできました。自身の子育てと、保育士として他の子どもたちを見ることは全く異なる経験だったといいます。実習後は、道端に落ちている松ぼっくりを見たときに「これは季節を感じさせる遊び道具になるかもしれない」と感じるようになるなど、以前とは「世界の見え方」が変わったことを実感したそうです。
つるの剛士さんの学び直しに関するインタビュー風景
勉強の楽しさに目覚め、大学編入で心理学と出会う
保育士資格を取得し、短大を卒業した後も、つるのさんは大学への編入を選び、学びを続けました。これは、これまで勉強が得意ではなかった彼が、いざ学び始めてみたら「勉強するのが楽しくなってしまった」からだといいます。短大卒業と資格取得で一つの目標を達成し、燃え尽き症候群のような状態になったものの、新しいことを知る喜びや、課題をクリアしていく充実感を味わっていたため、せっかくならもう少し学んでみようと考えたのです。
短大の系列大学に「こども心理学部」があると聞き、「幼児教育や保育について、より深く学べるのだろう」と安易に編入学を決めたとのこと。しかし、実際に始まってみると、そこは子どもに限らず、幅広い分野の心理学を学ぶ学部でした。しかも、編入は1年生からではなく3年生からだったため、いきなり専門的な講義や演習が始まり、最初は面食らったといいます。
ところが、これまで全く縁がなかった心理学の世界が予想外に面白く、次第にのめりこんでいきました。例えば、スーパーに並ぶ飲み物のパッケージデザイン一つをとっても、どのようなデザインが消費者の購買意欲を高めるのかを心理学的な視点から考えることができる。人が生きていることのすべてが心理学に関係していることに気づき、学ぶことがどんどん面白くなっていったそうです。
学び続けることで広がる視野と人生の可能性
40代半ばで始めた学び直しは、つるの剛士さんにとって、単なる資格取得や知識習得に留まらない大きな変化をもたらしました。保育実習での経験で「世界の見え方」が変わったように、心理学の学びもまた、日常のあらゆる出来事に対する見方、考え方を深めるきっかけとなりました。学び続けることの楽しさ、予期せぬ分野との出会い、そしてそれらが自身の視野を広げ、人生をより豊かにしていくことを、つるのさんは自身の経験を通じて示しています。50歳を迎え、認定心理士の資格も取得したつるのさんの、これからの活動や、学びの経験をどのように活かしていくのかに注目が集まります。