「いら立ちしか感じない」別府ひき逃げ殺人から3年 八田容疑者の行方いまだ不明

猛スピードで突っ込んだ軽自動車により、一人の若者の命が突然奪われた痛ましい事件。2022年6月29日に大分県別府市で発生したこのひき逃げ事件(後に殺人事件に発展)から、まもなく3年が経とうとしている。しかし、事件の容疑者はいまだ見つかっていない。この悲劇は、残された家族や友人に深い傷を残したまま、時間の経過とともに怒りと悲しみを募らせている。

悲劇から3年、母と友の思い

亡くなった大学生Aさん(当時19歳)の母親は、息子を失った悲しみと3年経ってもなお容疑者が捕まらない現実に対し、深い苦悩を抱えている。「息子がこの世からいなくなって、あっという間に3年が過ぎようとしています。未だに信じられません。もっと幸せな時間をこれからは過ごすはずでした。笑って息子の成長を喜ぶはずでした。こんなにも捕まらないなんて…。」と、胸の内をつづった。愛する息子の命を突然奪われた母親の悲しみは癒えることはない。

そして、今なお行方が分からない事件の容疑者、八田與一(はった よいち)容疑者(28歳)。彼は全国に重要指名手配されており、警察が総力を挙げてその行方を追っているが、足取りはいまだつかめていない状況が続いている。

あの日、別府で何が起きたのか

事件当日、大学生のAさんと友人Bさん(当時20歳)が、信号待ちをしていた別府市内の交差点が悲劇の舞台となった。1台の軽乗用車が、時速100キロメートル近い猛スピードで、信号待ちをしていたAさんとBさんに向かって突っ込んだのだ。この無謀な衝突により、Aさんは命を落とし、Bさんは負傷した。現場に残された携帯電話や財布などから、捜査線上に八田容疑者が浮上した。警察は当初、時効が7年の道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで捜査を進めていたが、2025年6月2日には容疑を「殺人」と「殺人未遂」に切り替え、これにより事件の時効はなくなった。これは、警察が事件の悪質性と、容疑者の殺意を強く認識していることを示している。

別府で発生した死亡ひき逃げ・殺人事件で使われたものと同型の白い軽自動車。

事件直前の「言いがかり」と恐怖の追突

事件で負傷したBさんは、現在の心境を「今、生きていたら(Aさんは)どんな生活を送っていたのかな。あの時、八田容疑者と遭遇する場所にいかなければとか、そういったことを思ってしまうときは多々ある」と語る。あの時、AさんとBさんが八田容疑者と遭遇したのは、事件発生のわずか数分前、現場からおよそ400メートル離れた商業施設だったという。歩きながら大音量で音楽を流していた八田容疑者とAさんの目が合ったところ、八田容疑者がAさんに対して「言いがかり」をつけてきたという。

Bさんは、八田容疑者との接触時間について「1分もないぐらいだと思います。本当に短い時間です」と振り返る。Aさんはその場で八田容疑者に謝罪し、一旦はやり取りが終わったかと思われた。しかしその数分後、二人が交差点で信号待ちをしていると、恐ろしい出来事が起きた。Bさんはその瞬間のことを克明に語る。「バイクのミラーを見たら、すごい勢いで光が近づいてくるのが見えて、F1とかでしか聞かないような、『ブーン』みたいな、回転数がどんどん上がっていくような音が後ろから聞こえてきて、『やばい逃げろ』って言おうとしたんですけど、その頃には追突された。ものすごい八田容疑者の殺意を感じました。」Bさんは八田容疑者の行動に明確な殺意を感じ取っていた。

Bさんは、命を奪っておきながら卑劣にも逃走を続ける八田容疑者に対して「いら立ちしか感じない」と語り、年月が経過するにつれて怒りは増していく一方だと、​その憤りを露わにした。

事件発生から3年が経ち、容疑は殺人・殺人未遂に切り替わった今も、八田與一容疑者の行方は不明のままだ。この重大事件の一日も早い解決と、容疑者逮捕が待たれる。

参考資料

  • FNNプライムオンライン(Yahoo!ニュース経由)