国民民主党・伊藤孝恵氏が山尾志桜里氏を「追い落とし」 都議選後の影響力増大と党内力学

国民民主党の伊藤孝恵参院議員(50)が、先の都議選を経て党内で存在感を高めている。告示前ゼロから9議席へと躍進した党勢の陰で、特に注目されるのが、山尾志桜里氏(50)の参院選出馬を巡る苛烈な動きだ。伊藤氏は、党内から「ネクスト玉木」や「新女帝」と呼ばれるほどの影響力を持つに至っている。

都議選後の党内情勢と伊藤氏の発言力

都議選での9議席獲得は、玉木雄一郎代表(56)にとっては「大きな一歩」とされた。しかし、目標の11議席に届かなかったこと、そして山尾氏を巡る公認取り消し騒動が影を落とし、党内に祝勝ムードは限定的だ。政党支持率も低迷が続き、「山尾ショック」の影響は尾を引くとみられている。

一方、伊藤氏は自身のX(旧ツイッター)で「0は9になりました!」と高らかに勝利宣言を行い、強い存在感を示した。党の国会議員によれば、彼女は「玉木さんに忌憚なく意見を言える数少ない幹部の一人」であり、玉木代表の不倫報道時にも辛辣な投稿をした。榛葉賀津也幹事長(58)が「幹事長以上、代表未満」と呼ぶ影響力を持ち、姉御肌で若手議員からの信頼も厚く、一部で「女帝」「女王様」とも称される。

特に、山尾氏の参院選比例代表擁立方針が報じられた後、伊藤氏がXに「誰のことも幸せにしない決断でした」「玉木代表の度々の決断がこの事態を招きました」という文言を投稿したことは、二人の浅からぬ因縁を知る党内関係者を驚かせた。

“恩人”山尾氏への反旗:擁立騒動の波紋

伊藤氏の初当選は2016年。当時3歳と1歳の幼子を抱えながら民進党(当時)から出馬を決意した動機として、山尾志桜里氏の「政治家は子どもの未来をつくる」というフェイスブック広告を見て感動したことを挙げている。さらに、候補者選定の面接官を務め、伊藤氏を推挙したのも山尾氏だったという、“恩人”のような存在だ。

山尾志桜里氏 国民民主党の擁立問題に関連して山尾志桜里氏 国民民主党の擁立問題に関連して

その山尾氏に伊藤氏が反旗を翻すキッカケとなったのが、党内を大きく揺るがせた山尾氏の参院選擁立騒動だった。4月に擁立方針が報じられると、山尾氏の地元でもある愛知の支持者から「不倫相手の妻が亡くなっているんだぞ。後援会を脱会する」「サポーターを辞める」といった批判の声が地元支部に殺到した。愛知には山尾氏のファンが多い一方で、アンチも少なくない。実際に脱退者が相次ぐ事態となり、これに危機感を抱いた伊藤氏が、党を守るために「山尾切り」と呼ばれる動きに出たとされる。

伊藤氏のこうした行動は、党内での彼女の影響力が単なる発言力に留まらず、党の方向性や人事にまで及ぶ可能性を示唆している。自身の政治的な出発点となった人物に対しても、党の存続や安定を優先して厳しい判断を下せる姿勢は、「新女帝」としての存在感を一層際立たせている。都議選後の国民民主党の党内力学において、伊藤氏の動向は今後も注視されるだろう。