国税庁の統計によると、日本の給与所得者の平均年収は約460万円です。この数字を見て「周りはそんなに稼いでいない」と感じる人も多いでしょう。なぜ平均値と実感がこれほど異なるのか、そして日本社会で進む年収格差の背景にある実態を掘り下げます。
平均値が示す「からくり」と年収400万円以下の現実
平均年収が約460万円とされる一方で、この数字は一部の高所得者層が全体を押し上げる結果です。統計データを見ると、実際には年収400万円以下の給与所得者が全体の50.7%を占めています。これは、多くの人にとって平均値が実態と異なることを示唆します。
日本の給与所得者の年収分布イメージ、平均値と実態(年収400万円以下が半数)のずれを示すグラフィック
1000万円超えの増加と進む「二極化」
年収400万円以下の層が多数を占める一方で、年収1000万円を超える人々の数は近年増加傾向にあります。2020年には約239万人(全体の4.7%)でしたが、2023年には約279万人(全体の5.5%)となりました。これは社会全体が豊かになったというより、収入格差の拡大と二極化の進行を示唆します。
格差拡大の構造的背景:非正規雇用と業種間格差
こうした年収の二極化には、構造的な要因があります。一つは非正規雇用の増加です。厚生労働省の統計によると、非正規労働者の数と割合は過去十数年で顕著に増えました。非正規雇用は正社員に比べ賃金水準が低く、昇給やボーナスも限られるため、全体の平均年収を抑制する要因となっています。
もう一つは業種間格差です。ITや金融などの高収入を得やすい業種がある一方、介護や福祉、保育といった社会に不可欠な分野では賃金が低く抑えられがちです。このような産業構造の偏りも、年収格差拡大の一因と考えられます。
日本の平均年収460万円は、一部高所得者層に引き上げられた数字であり、多くの人々の収入実態とはかけ離れています。非正規雇用の増加や業種間格差といった構造的な問題が、この年収格差をさらに広げ、社会の二極化を進めている実態が統計からも見て取れます。
参考文献
- 国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」
- 厚生労働省「令和6年度版厚生労働白書」