衣料品販売大手「ZOZO」創業者で実業家の前澤友作氏が100%出資する資産管理会社「グーニーズ」(東京都港区)に対し、東京国税局が2023年3月期までの4年間で約4億円の申告漏れを指摘していたことが関係者への取材で判明しました。この指摘は、会社が社債発行に伴う利子を必要経費として計上したことに対し、国税局がこれを税負担を軽減する目的で行われたと判断したことによるものとみられています。
前澤友作氏、資産管理会社「グーニーズ」の申告漏れ問題に関する報道写真
申告漏れと指摘の理由
東京国税局がグーニーズに対し申告漏れを指摘したのは、2023年3月期までの4年間を対象とした税務調査の結果です。指摘額は約4億円に上るとされています。主な争点は、グーニーズが社債を発行し、その購入者に支払った利子を経費として計上したことでした。国税局は、この利子を実質的に受け取ったのは前澤氏の知人であると判断し、利払いという形をとることで税負担を不当に軽減しようとした目的があったとして、経費計上を認めなかった模様です。
複雑な社債と資金の流れ
関係者によると、グーニーズは2021年3月期に数億円規模の社債を発行しました。この社債は、都内にあるコンサルティング会社が全額購入しました。グーニーズはこのコンサルティング会社に対し、2023年3月期までの3年間で合計約2億円の利子を支払い、これを自社の経費として計上しました。
一方で、このコンサルティング会社も同額の社債を発行しており、これを前澤氏の知人が購入していました。コンサルティング会社がこの知人に支払った利子の額は、グーニーズから受け取った利子の大部分に相当しました。この知人による社債購入の原資は、前澤氏から低金利で借り入れた資金だったとされています。
国税局が判断した税回避の構図
東京国税局は一連の資金や社債の流れを調査する中で、グーニーズが発行した社債が、本来の資金調達という目的ではなく、経費計上を通じて税負担を軽減するためのものだったと判断したとみられています。
もし前澤氏が知人に直接資金を渡した場合、その性質によっては最高55%の贈与税が課される可能性があります。しかし、今回のように社債の利払いという形をとることで、税金は約15%の源泉徴収で済むことになります。国税局は、この資金提供には前澤氏に養育義務がある子どもの母親である知人への養育費的な趣旨が含まれていた可能性があり、前澤氏自身が高額な個人の税負担を回避しようとした狙いもあったと見ている模様です。
会社側の対応と税務上の結論
東京国税局は、社債を巡る問題に加え、他の経理上のミスなども含め、グーニーズに対し合計で約4億円の申告漏れを指摘しました。しかし、グーニーズ側には赤字などがあり、それらと相殺された結果、追徴課税は発生しなかったとのことです。
前澤氏側は、知人が前澤氏に養育義務がある子どもの母親であることを認めています。前澤氏は今回の件について「このたびは申し訳ありませんでした。私は納税義務から逃げも隠れもいたしません。今後はより一層適切な納税を心がけます」とのコメントを発表しました。
また、グーニーズもコメントを発表し、「課税庁と見解の相違があったのは事実だが、複数の税理士のアドバイスに基づき、適正に修正申告した」と述べています。
結論
今回のケースは、実業家の資産管理会社が社債を利用した複雑な資金移動を行い、それが税務当局によって税負担の軽減を目的としたものと見なされ、約4億円の申告漏れを指摘された事例です。最終的に追徴課税は発生しませんでしたが、高額所得者や資産家における税務の適正性について改めて注目が集まることとなりそうです。前澤氏およびグーニーズは修正申告に応じ、今後は適切な納税を心がける姿勢を示しています。