日本から韓国へ流出の文化財「華厳経」「十王図」一般公開、専門家評価

2025年7月8日、ソウル市鍾路区の国立古宮博物館で「紺紙金泥 大方広仏華厳経 巻第二十二」と「十王図」が一般公開された。これらはかつて日本に流出したが、それぞれ今年と昨年に韓国へ戻された文化財。一般公開が始まると、来場者からは感嘆の声が上がった。専門家は、高麗・朝鮮時代の仏教文化を伝える貴重な遺産の返還が大きな意義を持つと強調している。

韓国国立古宮博物館での返還文化財メディア公開会の様子韓国国立古宮博物館での返還文化財メディア公開会の様子

返還された文化財とその価値

国家遺産庁と国外所在文化遺産財団は、国立古宮博物館でこれらの文化財に関するメディア公開会を開催した。「紺紙金泥 大方広仏華厳経」は、紺色の紙に金泥で写経された高麗時代の経典であり、「十王図」は死後の世界を描いた朝鮮時代の10幅の仏画である。どちらも美術史的、歴史的に見て非常に価値が高く希少な文化財とされている。特に、これらの文化財は同時代の他の作品と比較しても、極めて良好な保存状態を維持している点が評価されている。

日本からの還収プロセス

両機関は長期にわたる調査を通じて、これらの文化財の所在を突き止めた。日本における美術品の流通は閉鎖的な側面があり、古美術商や一部コレクターのみがオークションに参加できるなど、国外からの情報確認が困難な場合が多い。今回の「華厳経 巻第二十二」は2024年10月に初めて存在が確認され、「十王図」は2023年11月にオークション出品情報からその存在が把握されたという経緯がある。

専門家による意義の強調

「華厳経 巻第二十二」は華厳宗の根本経典を扱う重要な巻であり、全80巻のうち完本が存在しないことから、この巻が返還された意義は学術的に大きい。馬谷寺聖宝博物館のペ・ヨンイル館長は、「状態が非常に良好であり、高麗と元の交流研究に資する資料的価値が大きい」と評価した。「十王図」は、朝鮮初期に制作された十王図の中で初めて確認された完本として特別な意義を持つ。一般的な絹より軽く繊細な高級絹に描かれ、横44cm、縦66cmと小型であるなど独自の特徴が見られる。東亜大学のパク・ウンギョン名誉教授は、「韓国仏教絵画史のみならず、東アジア仏教美術全体においても極めて貴重な資料」と述べている。

今後の活用方針

国家遺産庁は、両文化財が良好な保存状態であることから、今後の研究や展示に積極的に活用する方針を示している。現在は国立古宮博物館に仮保管されており、詳細な学術研究や一般公開の機会が今後検討されていく見込みだ。

結論

今回一般公開された「紺紙金泥 大方広仏華厳経 巻第二十二」と「十王図」の韓国への返還と公開は、海外に散逸した文化遺産の回復に向けた重要な一歩と言える。専門家からもその学術的・美術史的な価値が高く評価されており、今後の研究や展示を通じて、より多くの人々にこれらの貴重な文化財の価値が伝えられることが期待される。