「台湾有事」米中衝突に備え、米高官が日豪に「役割明確化」を要請

コルビー米国防総省政策担当次官が、台湾有事の際に米中が軍事衝突した場合の日豪両国の役割を明確にするよう求めたことが、英紙フィナンシャル・タイムズの電子版の報道で明らかになりました。この要請は、インド太平洋地域における米国の安全保障戦略、特に台湾を巡る情勢緊迫化を背景としており、日米豪の同盟・協力関係における重要な課題を提起しています。

コルビー次官からの具体的な要請

デービッド・コルビー氏は、米国防総省で政策を担当する高官であり、同省のナンバー3に位置付けられます。フィナンシャル・タイムズ紙が報じたところによると、同次官は日本とオーストラリアに対し、もし台湾を巡って米国と中国が軍事的に衝突するような「台湾有事」が発生した場合、両国がどのような役割を担うのかを事前に明確にしておくよう強く要請した模様です。この要請は、米中間の緊張が高まる中で、潜在的な軍事シナリオに対する同盟国との連携を強化する米国の意図を反映しています。

日米豪3カ国の防衛協力に関する会合の様子日米豪3カ国の防衛協力に関する会合の様子

台湾有事が日豪にとっての重要性

台湾は、戦略的に重要な第一列島線の中央に位置し、半導体産業においても世界の主要な役割を担っています。中国は台湾を自国領土の一部と見なしており、武力行使も辞さないとしています。一方、米国は台湾関係法に基づき台湾の防衛能力構築を支援しており、もし台湾に対する武力侵攻があれば、米軍が介入する可能性が指摘されています。このような「台湾有事」は、日豪を含むインド太平洋地域全体の平和と安定に壊滅的な影響を与えかねないため、各国は警戒を強めています。日本は地理的に台湾に近く、有事の際には避難民の発生や南西諸島への影響など、直接的な脅威に直面する可能性があります。オーストラリアも主要な同盟国として、地域の安定に深く関わっています。

米国のインド太平洋戦略と同盟国の役割

コルビー次官の要請は、米国のインド太平洋戦略の中核にある同盟国との連携強化という考え方に基づいています。米国は、増大する中国の軍事力に対抗し、地域の安全保障を維持するためには、日本やオーストラリアのような主要な同盟国との緊密な協力が不可欠であると考えています。有事の際に各国がどのような役割(例えば、後方支援、情報共有、兵站協力など)を果たすかを事前に取り決めておくことは、共同での対応能力を高め、抑止力を強化することにつながると見られています。これは、同盟国間の相互運用性向上や、共通の脅威認識に基づく協調行動を促進するための米国の継続的な取り組みの一環です。

台湾周辺での共同訓練に参加する艦船台湾周辺での共同訓練に参加する艦船

日本とオーストラリアが直面する課題

コルビー次官の要請は、日豪両国にとって安全保障政策における重要な課題を突きつけます。日本は平和憲法の下で集団的自衛権の行使に一定の制約があり、具体的な有事における自衛隊の役割には依然として議論があります。特に、台湾有事のような特定のシナリオにおける自衛隊の具体的な任務や活動範囲については、国内でのさらなる議論と法整備が必要となる可能性があります。オーストラリアも独自の安全保障政策を持ち、具体的な軍事行動への関与については国内の承認プロセスが必要です。この要請は、両国に対して、潜在的な軍事シナリオにおけるより具体的かつ踏み込んだ関与の可能性について内部で検討を進めるよう促すものと言えます。これは、日米豪の安全保障協力を巡る今後の焦点となるでしょう。

コルビー米国防総省政策担当次官が日本とオーストラリアに求めた「台湾有事における役割明確化」は、米中間の緊張が高まる中、インド太平洋地域の安全保障構造が新たな段階に入っていることを示唆しています。日豪両国は、米国の主要な同盟国として、来るべき不測の事態にどう備えるか、具体的な役割分担について米国との間でより深い議論を進める必要に迫られています。この問題は、今後も日米豪の安全保障協力を巡る重要な焦点となるでしょう。

出典:フィナンシャル・タイムズ電子版(共同通信より)
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