参院選、外国人政策が主要争点に 「排外主義への懸念」専門家らが警鐘

7月20日の投開票が迫る参議院選挙において、外国人政策が主要な争点の一つとして急速に浮上しています。外国人への規制強化を掲げる政党が注目される一方で、この議論の方向性に対し、専門家や識者から「排外主義につながる懸念がある」との声が上がっています。国民の間でも様々な意見が交わされており、有権者の判断が問われています。

外国人政策の急浮上とメディアの視点

TBS系の『報道特集』は12日の放送で、参院選における外国人政策の争点化を取り上げました。番組では、「日本人ファースト」を掲げ支持を広げる政党の動向に触れ、社会がこれまで受け入れてこなかったような排外的・差別的な主張がSNSで拡散される現状に焦点を当てました。

番組終盤、山本恵里伽アナウンサーは率直な戸惑いを表明。「外国籍の人たちと全く関わらずに生活している人はほとんどいない」と述べ、学校や職場の身近な存在に触れながら、「自分の一票が、身近な人たちの暮らしを脅かすものになるかもしれない」と指摘。これまで以上に「想像力を持って投票しなければならない」と有権者に強く呼びかけました。

古舘伊知郎氏が示す「排外主義」への強い懸念

フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏もまた、自身のYouTubeチャンネル(7月14日更新)で外国人政策に関する持論を展開しました。古舘氏は「排外主義の方向へ過熱するのは本当にダメだと思っています」と明確に反対姿勢を示しました。

しかし、その上で、現在の状況は自民党が「安い労働力狙い」で外国人を呼び込んできた政策の「ツケが回ってきた」結果だと分析。日本では少子高齢化と人口減少が進む一方、在留外国人は過去最多の370万人を突破しており、外国人労働者やインバウンドが増加する中で、犯罪やトラブルといった問題も同時に顕在化している現状に言及しました。

参院選での外国人政策論争について語るフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏参院選での外国人政策論争について語るフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏

古舘氏は、政府が新たに発足させた「外国人との秩序ある共生社会推進室」についても、参院選対策の側面が強いとして批判的な見方を示しました。「参政党の『日本人ファースト』による保守層切り崩しへの危機感を自民党が覚えている動き」だと指摘。

さらに、コンビニエンスストアや工事現場、農業など、多くの現場で外国人が労働に従事している現実について、「一旦目を閉じてみるんですよ」「ふっと目を開けてみて、今日の朝から急に外国人が1人もいなくなってしまったっていう世界になったら、日本回りませんよ」と強く訴えました。日本人が「やりたくない辛い労働」を外国人が引き受けている、あるいは「引き受けさせている」現実があるとし、「綺麗な言葉だけでやってないで、根本から変えていかなきゃいけないし、ものすごく議論が必要だ」と、共生のための真剣な議論の必要性を強調しました。

インバウンドと「思慮深さ」の重要性

インバウンドについても言及した古舘氏。銀座や新宿などに外国人観光客が大勢訪れ消費する光景について、「買い物に来ているわけですから、当然金を使っている」「『ここは日本なんだ』って思う気持ちはわかりますよ」と、日本人の中に生まれる複雑な感情に理解を示しました。

しかし、「だからといって排外主義で『お前ら出ていけ』って、そっちに走っちゃいかんと思うんですよ」と重ねて警告。日本社会全体として「思慮深さというものを真剣に考えるべき」であり、「議論が大切なんだ」と改めて訴えました。また、外国人が「安い労働力」として「仕事を奪ったわけじゃない」とし、格差拡大の根本原因は別にあると指摘しました。

日本の格差と政治への批判

現在の日本の格差や様々な問題の背景について、古舘氏は「こんな日本にしたのは、自民党が大企業とか信仰宗教の力も借りて、選挙に見事に組織票で勝って、裏返金作りに励んできた」結果だと厳しく批判。「その政治の無意無策の結果の一端として表れてる」との見解を示しました。単に外国人政策だけでなく、長年の政治のあり方が現在の社会状況を生み出しているという視点を提示しました。

最後に:有権者への呼びかけ

古舘氏は、このような重要な社会問題があるにも関わらず、「選挙なんか行ったって何にも変わんないよっていう風に」「有権者の半数弱が選挙に行かないなんてことになったら、何にも変わんないし」と、低い投票率への懸念を示しました。そして、「みんな選挙行きましょうよ」と、未来を選択するための投票行動の重要性を改めて強く呼びかけ、締めくくりました。

外国人政策を巡る議論は、日本の将来に深く関わる問題であり、有権者一人ひとりが多角的な視点から情報に触れ、主体的に考えることが求められています。

参考資料

  • 『報道特集』(TBS系、2024年7月12日放送)
  • 古舘伊知郎氏 YouTubeチャンネル(2024年7月14日更新)
  • 法務省 在留外国人統計(言及されたデータに基づく)
  • その他関連報道