近年、「イット!」などの報道機関が警鐘を鳴らしてきた、有名企業を装ったサーキュレーターの偽広告が、消費者の間で深刻な問題となっています。動画配信プラットフォームの広告に潜む巧妙な手口は、多くの人々を騙し、期待とはかけ離れた製品を送りつけています。今回は、実際にその被害に遭われた方の証言を通じて、オンライン広告詐欺の具体的な実態と、消費者が見舞われる落とし穴に迫ります。
「開けてびっくり。だまされたと」被害者が語る衝撃の事実
埼玉県所沢市にお住まいのAさんは、このサーキュレーター詐欺の最新の被害者の一人です。Aさんのリビングのテーブルには、中国語とラクダのマークが書かれた軽量な箱が3つ置かれていました。これらはAさんが「偽広告に騙されて購入した」と語る問題の製品です。
Aさんは6月、YouTubeに表示された「電源を入れた瞬間、1秒でエアコンのような涼しい風を送り出す」と謳うサーキュレーターの誇大広告を目にし、購入を決意しました。その広告動画は、白い煙で強烈な風量を表現し、「1秒で室温を20℃下げる」といった非現実的なアピールをしていたのです。家族のためにと、Aさんは3台をまとめ買いし、セール価格約1万2000円をクレジットカードで支払いました。「自分の分と子どもたちの分を。これだけ効くなら孫たちも喜ぶだろうと思って」と、当時の期待を語ります。
しかし、届いた商品は広告とは似ても似つかないものでした。「イット!」が報じた同様の偽広告被害のニュースを見たAさんは、自分が注文したまさにその商品だと気づき、愕然としたといいます。「ああ、だまされたな。あきれてすぐに箱にしまいました」と、当時の心境を明かしました。
広告と実物、驚くべき「風量」と「機能」の乖離
実際に届いたサーキュレーターを組み立てて試してみたAさんは、広告とのあまりの違いに驚愕しました。羽根は回るものの、感じられるのは「かすかな風」程度。小さな羽根から出る風量は「そよ風」にも満たない弱さでした。ビニールの紐を羽根の中心に近づけても、わずかな部分しか風が当たらないことが明らかになります。
広告では、この製品が「首を自動で上下左右に360度自在に動かし、広範囲に冷気を送るハイテク商品」と強調されていました。しかし、Aさんの手元に届いた製品には、水平方向の首振り機能すらなく、首の角度は手動で調整するしかできません。「(広告に)書いてあったのとまったく違います。上下はしませんからね、これは」「自動で動くようなものだと思っていました」と、Aさんは落胆の色を隠せません。「広告宣伝に書いてあるものは全部ないんですよね。早く捨てたいです」と、偽商品への憤りを語りました。
このサーキュレーターの偽広告については、広告に記載されていたとされる企業や団体が全て関与を否定しており、完全に詐欺広告であることが確認されています。消費者は、通販サイトでのトラブルや不正広告に警戒し、あまりにも好条件すぎる商品には十分注意を払う必要があります。