温暖化で日本の雪はどう変わる?「ドカ雪」「雪爆弾」時代の到来

温暖化は、日本の気候、特に積雪にどのような変化をもたらしているのでしょうか。三重大学大学院の立花義裕教授は、冬期全体としては降雪日数と積雪期間が減少する一方、一度雪が降ると集中的に大量に降る傾向が強まると指摘します。これは、南極や北極の気候変動が日本の天候に影響を及ぼし、「ドカ雪」や新たな用語である「雪爆弾」といった現象を引き起こす一因となっています。

温暖化が日本の雪にどう影響するか

寒気の分裂や極渦の崩壊といった現象は、日本でのドカ雪増加の背景にあります。これに加え、日本近海の海面水温の上昇が重要な役割を果たしています。猛暑で温められた日本の周辺の海水は、冬になってもその高温を維持しやすくなっています。

冬の日本の気候変動による雪(イメージ)冬の日本の気候変動による雪(イメージ)

このため、冬の時期でも暖かい海からは大量の水蒸気が蒸発します。シベリア大陸から流れ込む寒気は、日本海上でこの水蒸気を大量に吸収し、非常に発達した雪雲へと成長します。これは、厳冬期の寒い地域にある露天風呂から湯気が立ち上る状況に似ています。結果として、日本中で豪雪のリスクが高まっているのです。

2024〜25年の冬期には、日本海の海面水温が平年より4度以上高い海域も見られました。黒潮を主な源流とし、日本海を北上する対馬暖流の流量が増加していることも、北海道沿岸まで異常に高い水温が観測される一因となっています。この影響で、たとえ寒気の強さが中程度であっても、一度の降雪量が増大する傾向にあります。北海道から九州に至るまで、寒気が流れ込めば日本海側や東シナ海側ではドカ雪に見舞われるリスクが高まっています。

ただし、すべての地域で雪が増えるわけではありません。冬期の地上気温が零度付近の地域では、寒気がそれほど強くない場合は雪ではなく雨となる可能性が増えます。一方で、東北や北海道、標高の高い地域など、冬期に地上気温が零度以下となる地域では積雪が増加する傾向にあります。現在、2010年以前と比較して海面水温が高いため、より水分を多く含んだ雪が降るようになっています。

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の模式図:温暖化による積雪増加のメカニズム日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の模式図:温暖化による積雪増加のメカニズム

「雪爆弾」という新現象

「ジャパウ(JAPOW)」という言葉をご存じでしょうか。これはJapan Powder Snowを組み合わせた造語で、日本のサラサラとした粉雪を指し、冬にはこの最高のパウダースノーを求めて世界中からスキー愛好家が集まります。しかし、温暖化により水分を多く含む雪が増える傾向は、ジャパウを目的とするスキー愛好者にとっては好ましくない変化と言えるでしょう。パウダースノーの聖地として知られるニセコ地区の倶知安町も、この影響を受ける可能性があります。

温暖化の進行により、冬期全体の降雪日数は減少し、積雪期間も短くなる傾向にあります。しかし、雪が降る際には、短時間で大量の雪が集中して降る、これが新しい時代の日本の冬の特徴です。最近では、このような集中的な豪雪を表す言葉として「雪爆弾」というワードが、注意喚起のためにマスコミでも使われ始めています。

例えば、2025年2月4日に北海道帯広市で観測された24時間積雪量は124センチメートルに達し、観測史上1位の記録となりました。このように、猛暑によって海面水温が高くなることが雪爆弾の一因となっており、猛暑と雪爆弾が連鎖する状況が見られます。帯広で雪爆弾が発生した背景には、三陸沖や北海道南岸の海面水温が高かったことが一因として挙げられます。帯広の南西から低気圧に伴う雪雲が流れ込む際、通常は南から暖かい空気が流入することが多いですが、帯広は北海道内でも特に寒冷な地域のため、暖かい空気が入っても雪として降るのです。

太平洋側、東京でのリスク

太平洋側の北海道以外の地域、特に南側に海が開けている地域では、昔も今も雪が降る頻度は高くありません。しかし、寒気が日本列島全体を強く冷え込ませた後、南から暖かい風が流れ込むような状況が発生すると、海面水温が高いため、雨ではなく雪となり、しかも降雪量が増加する可能性があります。

実際、過去と現在の関東地方における大雪を比較すると、温暖化が進行しているにも関わらず、大雪の頻度や規模に大きな変化が見られないように見えます。しかし、大雪が降った年の関東の気象官署の積雪深の順位を見ると、記録的な積雪量となった1984年を除けば、積雪量が多い年の多くは1990年代以前よりも2000年代以降の近年である傾向が確認できます。

降雪量は太平洋側よりも日本海側の方が圧倒的に多いですが、雪の降り方が「ドカ雪」化する傾向は、日本海側でも太平洋側でも共通しています。黒潮の大蛇行が、東京においてゲリラ雷雨だけでなくドカ雪をもたらす可能性も指摘されています。

結論として、温暖化は日本の積雪状況に顕著な変化をもたらしています。冬全体での降雪日数は減少する傾向にありますが、ひとたび雪が降る際には、海面水温の上昇などが影響し、過去に例を見ないような短時間での集中豪雪、すなわち「雪爆弾」のリスクが高まっています。これは、日本海側だけでなく、気象条件が整えば太平洋側、都市部である東京においても警戒が必要な新たな気候現象と言えるでしょう。立花義裕教授の著書『異常気象の未来予測』は、こうした気候変動の現実とその将来予測について詳しく解説しています。

出典:PRESIDENT Online (記事の一部を再編集)