中国拘束邦人、アステラス社員に実刑判決 元被拘束者・鈴木英司氏が語る「危機管理の必要性」

中国・北京市でスパイ罪に問われたアステラス製薬の60代日本人男性社員に対し、同市の第2中級人民法院(地裁)は16日、懲役3年6月の実刑判決を言い渡しました。これを受け、「日本のスパイ」として中国で6年間拘束された経験を持つ元日中青年交流協会理事長の鈴木英司氏(68)が、拘束生活の過酷さと中国における邦人保護の重要性について語りました。

アステラス製薬社員への判決:外交的思惑か

アステラス製薬の男性社員に適用された刑法110条のスパイ行為に関する量刑は、鈴木氏によれば「ほぼ最低」であり、比較的軽いと言えます。判決文が未公開であるため断定はできませんが、この軽い量刑には、中国が日本に対し「外交カード」として貸しを作り、何らかの思惑がある可能性も指摘されています。

精神的な苦痛を伴う「居住監視」の実態

鈴木氏が中国で6年以上に及ぶ拘束生活の中で最も精神的苦痛だったと語るのは、逮捕前の「居住監視」という手続きです。約7カ月間、監視役が24時間体制で常駐し、トイレや入浴まで監視されるという過酷な環境に置かれました。今回の男性社員も同様の監禁状態にあったと推測され、拘置所の収容者と交流ができる環境と異なり、その精神的負担は計り知れません。既に拘束期間は2年以上に及び、男性社員の健康状態が懸念されています。

中国での拘束経験を語る元日中青年交流協会理事長・鈴木英司氏。邦人保護の重要性を訴える専門家。中国での拘束経験を語る元日中青年交流協会理事長・鈴木英司氏。邦人保護の重要性を訴える専門家。

厳格化する中国反スパイ法と邦人保護の喫緊性

中国は2023年の反スパイ法改正により、スパイ行為の定義を広げました。これにより、当局の判断次第で日本人を含む邦人が拘束される危険性が以前にも増して高まっており、未然の防止には限界があります。鈴木氏は、日本政府に対し、早期の邦人解放を目指す有識者会議の創設など、危機管理体制の構築に全力を注ぐべきだと強く訴えています。国の積極的な姿勢を国内外に示すことは、中国に早期解放を迫る圧力となるだけでなく、中国に滞在する日本人駐在員らの不安を軽減する上でも不可欠です。今、邦人保護に向けた日本の熱意と本気度が問われています。

参考資料

  • 毎日新聞 (2023年4月21日)「中国拘束2279日 スパイにされた親中派日本人の記録」の出版記念トークイベントでの鈴木英司氏講演より
  • Yahoo!ニュース (2024年3月16日) 「中国でアステラス社員実刑判決 元拘束邦人・鈴木英司氏「スパイ罪での最低量刑」も『危機管理体制の構築を』」
  • 中華人民共和国刑法第110条関連規定