参院選を席巻した参政党:「日本人ファースト」と健康不安が支持を呼んだ理由

20日に投開票が行われた参議院選挙において、神谷宗幣氏が代表を務める参政党が、1議席から大幅に議席を増やし、新たに14議席を獲得しました。これにより、非改選議席と合わせて参院での勢力は計15議席となり、野党の中では第4位の規模となりました。「日本人ファースト」を掲げ、時に過激とも評される発言をしてきたこの新興政党は、なぜこれほどの旋風を巻き起こすことができたのでしょうか。コラムニストの辛酸なめ子氏の分析を交えながら、その背景に迫ります。

参政党の驚異的な躍進とその政策理念

参政党は今回の参院選で、「これ以上、日本を壊すな」という明確なスローガンを掲げ、「日本人を豊かにする」「日本人を守り抜く」「日本人を育む」という三つの柱を打ち出しました。辛酸なめ子氏は、同党の言葉選びが非常にキャッチーであると評価しています。しかし、そのメッセージの根底には、新型コロナウイルス感染症が拡大した後の社会に残る健康への漠然とした不安や、陰謀論といった概念に対して「確たる情報」を持っているのではないかという、大衆の期待を抱かせる印象があったと指摘します。

コロナ禍が煽る健康不安と「確たる情報」への渇望

特に注目されるのは、参政党が掲げる健康に関する主張が人々に与えた影響です。かつて共同代表を務めていた歯科医師の吉野敏明氏(現:日本誠真会代表)が提唱する「四毒除去」の思想は、砂糖、牛乳、食物油、小麦粉を避けるべきだというもので、これは多くの人々の間で支持を集めています。辛酸なめ子氏の周囲にも、この四毒を信奉する人々が少なくなく、彼女が知人に菓子を差し入れた際に「小麦や砂糖が入っているから毒」と受け取りを拒否された経験は、その思想がどれほど人々に浸透しているかを示す一例です。

吉野氏は「メロンパン1個食べて翌日死んだ人はたくさん見ています」といった過激な発言もしていましたが、冷静に考えれば、メロンパンで何人もが命を落とすとは考えにくいことです。それでも、辛酸なめ子氏は、健康への強い関心や、特にコロナ禍で増幅された不安が、「やはりメロンパンは毒だ」という極端な考えに人々を傾倒させる要因になっていると分析します。彼女の周囲で、普段から健康やオーガニック食品にこだわる人々が、「参政党の人たちの話していることは信頼できそうな気がする」とごく自然に話していたというエピソードは、同党が現代社会の不安と情報への渇望を巧みに捉えていたことを示唆しています。吉野氏が参政党を離れた後も、代表である神谷宗幣氏らの発言は度々メディアで報じられています。

結論

参政党の今回の参院選での躍進は、単なる政治的メッセージの勝利に留まらず、新型コロナウイルス感染症という未曾有の危機を経て、社会全体に広がる健康への漠然とした不安、そして既存の権威や情報源に対する不信感が背景にあるとみられます。同党は、「日本人ファースト」というナショナリズムを呼び起こす強いメッセージに加え、人々のデリケートな健康問題や、時に陰謀論とも結びつく「確たる情報」への渇望を巧みに満たすことで、多くの有権者の心をつかんだと言えるでしょう。この現象は、現代社会における情報消費のあり方や、不安を抱える人々の心理が、いかに政治勢力の台頭に影響を与えるかを示す重要な事例と言えます。

Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/85e55932646d7655252101a456d42c0316d93086