静岡・浜松ガールズバー殺傷事件の深層:LINE巡る逆恨みか、被害者夫が語る悲痛な胸中

静岡県浜松市の歓楽街、千歳町で発生したガールズバー殺傷事件は、身勝手な動機が引き起こした悲劇として大きな波紋を広げています。2025年7月6日未明、常連客の男が女性従業員を襲い、店長を含む二人の命が奪われるという痛ましい事件の全容と、その背景に迫ります。

ガールズバー殺傷事件の被害者、竹内朋香さん(左)と加害者の山下市郎容疑者(右)。飲食店紹介サイトに掲載されていた写真。ガールズバー殺傷事件の被害者、竹内朋香さん(左)と加害者の山下市郎容疑者(右)。飲食店紹介サイトに掲載されていた写真。

犯行の詳細と常連客「推し」の歪んだ執着

事件は7月6日午前1時ごろ、浜松市内のガールズバーで発生しました。山下市郎容疑者(41)は、店員の伊藤凛さん(26)を連れて彼女の勤務先を訪れました。この時、山下容疑者は殺傷能力の高い「ククリナイフ」を所持しており、店長の竹内朋香さん(27)を背後から何度も刺し、さらに店外へ逃げようとした伊藤さんも続けて襲撃しました。

山下容疑者は、亡くなった伊藤さんの“指名客”であり、店の元従業員によると、事件の約3週間前にも店を訪れ、「こいつ(伊藤さん)はおれの“推し”。あいつのところ以外は行かない」と語り、笑顔で伊藤さんの写真を見せていたといいます。この言葉からは、伊藤さんへの異常なまでの執着が伺えます。

LINEのやり取りが引き金か:逆恨みによる犯行

なぜ、これほどまでに執着していた女性の命を奪うことになったのでしょうか。捜査関係者によると、山下容疑者は事件前、何らかの方法で竹内さんと伊藤さんのLINEのやり取りを確認していたことが判明しています。そのメッセージの中には「あいつうざいです」といった、容疑者を煙たがるような内容が含まれており、これに激怒した山下容疑者が犯行に及んだとみられています。竹内さんは、後輩である伊藤さんの相談に乗っていただけと見られますが、その行動が図らずも犯行の対象となる悲劇を招いてしまいました。

被害者夫の悲痛な叫び:「八つ当たり、とばっちりで死んだだけ」

亡くなった竹内さんの自宅を訪ねると、夫は深い悲しみを滲ませながら、その胸中を語りました。「ひとつ言えるのは、死んだヤツはなにも言えないし、死んだら終わりなんだよ。妻は完全に八つ当たり、とばっちりを受けて死んだだけなんだ」。バーのオーナーでもある夫は、山下容疑者と面識があったものの、客として飲んだことがある程度だったと言います。「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ。今は友達がそばにいてくれるからなんとか平常を保てるけど、正直ひとりになったら何をするかわからない」。身勝手な逆恨みによって失われた命の重さが、夫の言葉から痛いほど伝わってきます。

この理不尽な事件は、現代社会における人間関係の脆さや、一方的な感情が引き起こす深刻な結果を浮き彫りにしています。命が奪われた事実の重さは計り知れず、今後の捜査の進展と、同様の事件が二度と起きないための対策が求められます。

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