ホンダ シビック タイプR FL5、発表から3年後の「現在」を徹底評価

新米が年を重ねるごとに古米、古古米、古古古米と呼称を変えるように、自動車も登場からの期間でその「熟成度」が問われます。特に2022年9月に登場したホンダ シビック タイプR(FL5型)は、発表から約3年が経過し、いわば「古古古米カー」の域に達していますが、その魅力や性能は時を経てもなお色褪せることなく維持されているのでしょうか。本記事では、この注目のFFスポーツモデルが現在どのような「味わい」を見せているのか、詳細な評価をお届けします。

ホンダ シビック タイプR FL5: 基本情報とデビュー時の衝撃

2022年9月に発表されたホンダ シビック タイプR FL5型は、発売当初からスポーツカーファンの熱い視線を集めました。その価格は499万7300円から668万5800円(特別仕様車含む)で、2025年1月から5月の累計販売台数は6378台を記録しています。中古市場では、2022年式が約490万〜約660万円と、高いリセールバリューを維持している点が特筆されます。主な変更履歴としては、2025年1月に特別仕様車「RACING BLACK Package」が追加されました。

デビュー時のシビック タイプR FL5は、その「切れのいいパワー」が多くの専門家から絶賛されました。さらに、FFモデルでありながら「前輪の高いトラクション性能」と、「レースカー並みに締め上げたサスペンション」による「FF離れしたコーナリング性能」は、FFスポーツモデルの新たなベンチマークとして強い印象を残しました。

発表から約3年、現在の「味わい」と詳細評価

約3年が経過した現在、ホンダ シビック タイプR FL5の「味」はどう変化したのでしょうか。結論から言えば、このクルマは「新米」時から既に「これ以上精米できないレベルのポテンシャル」に仕上がっていたため、時間の経過によるネガティブな変化はほとんど見られません。まさに登場当時から「ブランド米」であり続けたと言えるでしょう。

主な変更点は、主にインテリアの改良や、価格改定を伴うRACING BLACK Packageの追加に留まっています。しかし、専門家としては、いくつかの改善点を指摘することができます。まず、シートのホールド性については、さらなる改良を促したい部分です。ドライブモードを「+R」設定にした際、サスペンションはかなり締め上げられ、車両のバウンシング(跳ねるような動き)が大きくなります。この挙動をいなすためには、シートの高いホールド性と剛性が不可欠です。ホンダがコスト面を考慮しつつも、あえてブランド系シートを採用せず自社開発に踏み切った点には拍手を送りますが、本気でサーキット走行を攻めるドライバーにとっては、もう少しの最適化が求められます。

総合的に見ると、パワーユニット、ハンドリング、運転支援機能に関しては、登場時と変わらず最高レベルを維持しています。乗り心地は+Rモードでのサスペンションの特性上、わずかに評価が下がりましたが、これはスポーツ走行性能とのトレードオフと考えられます。コストパフォーマンスも非常に高く、依然として魅力的な一台です。

ホンダ シビック タイプR FL5の躍動的な走行シーンホンダ シビック タイプR FL5の躍動的な走行シーン

ホンダ シビック タイプR 採点チェック(登場時 → 現在)

  • パワーユニット: 9点 → 9点
  • ハンドリング: 8点 → 8点
  • 乗り心地: 7点 → 6点
  • 運転支援機能: 8点 → 8点
  • コスパ: 9点 → 9点

総評:時を超えて輝く「ブランド米」の価値

ホンダ シビック タイプR FL5は、発表から約3年が経過した現在においても、その卓越した性能と魅力を全く失っていません。むしろ、その完成度の高さが時間とともにさらに際立つ結果となりました。一部の細かな改善点は見られるものの、全体としての走行性能、スポーツカーとしての本質は、まさに「不味くなりようがない」レベルで維持されています。

FL5は、単なる速いクルマではなく、ドライバーに純粋な運転の喜びを提供する一台です。中古車市場でも高い価値を維持していることからも、その需要と評価の高さがうかがえます。今後もFFスポーツカーの金字塔として、その輝きを放ち続けるでしょう。


参考情報:

  • 文: 松田秀士
  • 写真: ホンダ、ベストカー編集部
  • 初出: 『ベストカー』2025年7月26日号
  • 中古相場: 荻原文博氏調べ
  • 2025年累計販売台数: 1〜5月
  • 主要諸元中のMはモーター
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