2022年7月20日に投開票が行われた参議院選挙では、自民党・公明党の与党が堅調な議席を獲得した一方、参政党の大躍進が世間の注目を浴びました。しかし、こうした喧騒の陰で、日本の政界に長く根ざしてきた「老舗政党」である共産党と社民党が直面した厳しい現実、すなわち「苦闘」が政治ジャーナリストの間で密かに注視されていました。両党は、これまで革新勢力の中核として活動してきましたが、今回の参院選においては、政党としての存続が危ぶまれるほどの瀬戸際に追い込まれ、まさに「かろうじて命脈を保った」というのが実情です。
共産党の田村智子委員長と社民党の福島瑞穂党首が参院選で演説する様子。左に田村氏、右に福島氏。老舗政党の苦境を象徴する一枚。
共産党の議席減少と得票率の低迷
選挙結果の詳細を見ると、共産党は改選前の7議席から大きく議席を減らし、最終的に3議席にとどまりました。これは、選挙前に掲げていた目標である「比例代表で650万票、10%以上、5議席獲得」とはかけ離れた結果です。実際の得票数は286万4738票、得票率は4.84%となり、比例代表では改選前の4議席から2議席へと減少。さらに、選挙区では東京都で辛うじて1議席を確保したものの、これまで議席を維持してきた埼玉県と京都府では議席を失うという厳しい現実に直面しました。
過去の国政選挙と比較しても、共産党の苦境は明らかです。前回の参院選(2019年)では361万8342票(得票率6.82%)、昨年の衆院選(2021年)では336万2966票(得票率6.16%)を獲得していましたが、今回の参院選では得票数・得票率ともにさらに後退する結果となりました。
社民党のかろうじての政党要件維持とラサール石井氏の当選
一方、社民党もまた厳しい戦いを強いられましたが、比例代表で121万7823票を獲得し、得票率は2.06%となり、公職選挙法で定められている「政党要件」をかろうじて満たすことに成功しました。これにより、1議席を確保し、候補者名で20万7143票を集めたタレントのラサール石井氏が当選を果たしました。
ラサール石井氏は、公示日の7月3日の第一声で、当時話題となっていた参政党のスローガン「日本人ファースト」を念頭に置き、「人間にファーストもセカンドもない」と強く訴えました。このメッセージを各地の街頭演説などで繰り返し発信したことが、彼の当選に繋がった主要な要因と見られています。公職選挙法において、政党要件は「所属する国会議員が5人以上」または「直近の衆院選か参院選において比例代表か選挙区での得票率が2%以上」のいずれかを満たす必要があります。今回の選挙ではNHK党が得票率で政党要件を失う中で、共産党と社民党は両党ともこの要件を辛うじて維持することができました。
「老舗革新」両党の共通の訴えと直面する波
共産党と社民党は、ともに女性党首を擁しているという特徴があります。共産党の田村智子委員長と社民党の福島瑞穂党首は、選挙戦を通じてそろって「ミサイルよりも平和」というメッセージを熱心に訴え続け、「老舗革新政党」としての矜持を見せました。
しかし、両党の献身的な努力にもかかわらず、今回の参院選では、参政党の躍進に象徴される「保守化・右傾化」という有権者の意識の変化の波に飲み込まれる形となりました。さらに、既存の政党に対する有権者の強い不満や批判も直接的な打撃となり、共産党と社民党は長年の苦境から脱却するための具体的な糸口を見つけることができないまま、厳しい結果に終わったと言えるでしょう。