スティーブ・バノン氏、台湾有事への警鐘:日米同盟と「半球防衛」の重要性

元ホワイトハウス首席戦略官のスティーブ・バノン氏が、読売新聞の電話インタビューに応じ、台湾有事を巡る深刻な危機感と、それに対する日米韓の連携の必要性について強い警告を発しました。世界経済の安定と民主主義の原則が危機に瀕する中、バノン氏は中国の軍事行動と西側の対応について具体的な見解を表明。彼の発言は、日本を含む同盟国が直面する地政学的課題の緊急性を示唆しています。

「半球防衛」戦略と台湾の地政学的価値

バノン氏は、トランプ大統領が掲げる「半球防衛」戦略において、中央太平洋が米国の主要な戦略的焦点であると強調します。その上で、台湾は「第1列島線」上に位置し、世界最先端の半導体開発と生産の拠点であると指摘。もし中国共産党が台湾を支配すれば、世界経済は急激に落ち込み、未曽有の大恐慌に陥るだろうと警鐘を鳴らしました。これが、台湾が持つ戦略的な重要性の中核であると彼は力説します。

台湾有事について語るスティーブ・バノン氏台湾有事について語るスティーブ・バノン氏

中国海軍の活動活発化と「2027年」の危機

過去20年間で劇的に戦力を拡大した中国海軍が、東シナ海と南シナ海で軍事活動を強化している状況に対し、バノン氏は深い懸念を表明しています。彼はこれらの活動を単なる「演習」ではなく、「リハーサル」であると表現し、これを明確な警告信号として認識すべきだと主張します。バノン氏の見立てでは、日本、韓国、米国が組織的に海軍防衛計画を策定し、中国の侵攻に対抗する体制を整えなければ、2027年に台湾有事が起きる可能性は非常に高いとのことです。中国の経済が悪化する中で、習近平国家主席が民族主義を再燃させようとすれば、ますます危険な存在となるだろうと分析。日米韓が同盟国として一致団結して行動しない限り、2027年は非常に危険な年になるだろうと警告しました。

米国の断固たる介入姿勢と道義的義務

米軍が台湾有事に軍事介入すべきかという問いに対し、バノン氏は「疑いの余地がない」と断言しました。米国は台湾に対するいかなる攻撃も撃退するという立場を明確に、そして断固として示す必要があるとし、弱さを見せれば中国共産党の更なる侵略を招くだけだと強調しました。彼は中国共産党をいかなるレベルでも信頼できないと述べています。バノン氏自身の経験として、1977年から80年にかけて海軍将校として第7艦隊の駆逐艦で南シナ海と台湾海峡をパトロールし、日本への寄港も経験したことを明かし、中国の海軍力の急激な強化は誰にとっても衝撃的だと語りました。この状況において、米国には選択の余地はなく、道義的義務や民主主義と自由の防衛を放置することはできないとの強い信念を示しています。

MAGAの真意:国家安全保障への「非介入主義」

自身の関わるMAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)運動について、バノン氏は、それが「孤立主義者ではない」と明確にしました。また、平和主義者でも反戦主義者でもないと述べ、MAGAの真意は、米国にとって死活的に重要な国家安全保障上の利益に直接関係しない領域においては「非介入主義」であると定義しました。これは、誤解されがちなMAGAの外交政策スタンスを再確認するものです。

結論

スティーブ・バノン氏のインタビューは、台湾有事が単なる地域問題ではなく、世界経済と民主主義の根幹に関わる地球規模の危機であることを浮き彫りにしました。彼の「2027年」という具体的な年への言及と、日米韓の同盟国間での組織的な防衛計画の必要性の強調は、現在の国際情勢がいかに緊迫しているかを示しています。中国の軍事拡大と民族主義の高まりに対し、米国が断固たる意志を示すこと、そして日本を含む同盟国が一致団結して行動することが、地域の平和と安定、ひいては自由な世界秩序を守るための不可欠な要素であると強く訴えかけました。


出典: Yahoo!ニュース(読売新聞)
記事リンク: https://news.yahoo.co.jp/articles/4c25862d994ad91a06d17c791d43ba62012f059b