ソウル市江東区の巨大マンション群「オリンピックパーク・フォレオン」(旧・遁村住公)で、壁面に亀裂(クラック)が多数確認され、施工を担当する現代建設が精密安全診断を実施することになりました。昨年11月の入居開始以来、住民の間で安全性への不安が高まっており、今後は団地全体を対象とした一斉調査も行われる見込みです。このマンション亀裂問題は、韓国の建設業界における品質管理の重要性を改めて浮き彫りにしています。
ソウル市江東区オリンピックパーク・フォレオンの団地全景
住民の不安とSNSでの拡散
今回の問題は、先週、当該団地の住民がオンライン・コミュニティに投稿した写真から始まりました。第3団地の高層階廊下の壁面に水平方向に長く走る複数の亀裂が写されたこれらの写真は、瞬く間にSNSを通じて拡散され、大きな波紋を呼びました。写真を投稿した住民は、「クラックが1日で広がった」「家が崩れるのではないかと心配」といった切実な懸念を表明し、現代建設に対し早急な安全診断と状況説明を求めました。現代建設は、窓ガラス付近で確認された一部のひび割れに対し、パテを用いた一時的な補修作業を進めているとされています。
入居者代表会議の要求と構造的欠陥の指摘
住民の不安を受け、入居者代表会議は江東区庁に正式に苦情を提出するとともに、現代建設へ公式質問書を送付しました。質問書の主な内容は、亀裂の正確な位置と原因、Vカッティング方式による現行の補修の妥当性、再発防止策、そして類似事例に対する一斉調査の有無に及んでいます。特に、入居者代表会議は、直線状に長く続く多数のひび割れが見られることから、マンションの構造体そのものに瑕疵(かし)がある可能性を否定できないとの強い立場を示しています。これは単なる表面的な問題ではなく、建物の根幹に関わる問題であるとの疑念を抱かせます。
広がる調査範囲と施工各社の対応
江東区庁は、今回ひび割れが確認された第3団地だけでなく、HDC現代産業開発、大宇建設、ロッテ建設など、共同施工に参加したすべての建設会社に対し、団地全体の一斉調査を要請する計画です。これに対し、現代建設の関係者は「できるだけ早い時期に精密安全診断を実施する予定だが、具体的な時期や診断の範囲はまだ確定していない」と述べました。しかし、「専門業者を選定した後、速やかに安全診断を行って原因を把握し、必要な措置を取る方針」と説明しており、住民の懸念解消に向けて動き出す姿勢を示しています。
オリンピックパーク・フォレオン:大規模団地の背景
オリンピックパーク・フォレオンは、旧・遁村住公アパートの再建築事業として建設された、総戸数1万2000世帯にも及ぶ韓国最大級のマンション団地です。昨年11月から入居が始まりましたが、その建設過程では多くの困難が伴いました。特に、2022年には工事費の増額を巡る組合と施工会社の対立が激化し、約6カ月間にも及ぶ工事中断が発生しました。この紛争を経て、工事費は当初の3兆2300億ウォン(約3460億円)から4兆3700億ウォンへ、工期も42カ月から58.5カ月へとそれぞれ調整され、最終的に完工に至りました。
まとめ
ソウル市江東区のオリンピックパーク・フォレオンで発覚した壁面の亀裂は、大規模マンションの安全性に対する住民の深い懸念を呼び起こしています。現代建設による精密安全診断の実施と、江東区庁による全施工会社への一斉調査要請は、この問題を徹底的に究明し、住民の不安を解消するための重要な第一歩です。過去の工事中断といった経緯も踏まえ、透明性のある調査と迅速かつ適切な対応が求められており、今後の進展が注目されます。