(ブルームバーグ): 米国とロシアがウクライナ停戦協定の締結を目指して進めている交渉では、ロシアが軍事侵攻によって占領した領土の支配を確定する形となる見通しだと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
非公開情報であることを理由に匿名で語った関係者によると、米ロ両政府の当局者は、早ければ来週に開催される見通しの首脳会談に向けて、協議対象となる領土に関する合意の構築を進めている。確定にはほど遠い段階にあるが、米国はウクライナおよび欧州の同盟国からの同意を取り付けるべく調整を進めているという。
ロシアのプーチン大統領は、2014年に併合したクリミアに加え、ウクライナ東部と南部の4州全域の割譲をウクライナに要求している。関係者によると、合意案にはクリミアとドンバス地方の事実上の領土割譲が含まれ、受け入れるなら現在もウクライナ側が掌握しているルハンシク州やドネツク州などの一部地域から部隊を撤退させる決断をゼレンスキー大統領は迫られる。結果としてロシアは、2022年2月の全面侵攻開始以来、軍事的手段では達成できなかった勝利を外交交渉によって手にすることになる。
このような合意は、自ら始めた戦争の終結条件を米国と直接交渉することを長らく求めてきたプーチン氏にとって、大きな勝利を意味する。一方でゼレンスキー氏は、自国領土の喪失を受け入れるか否かという厳しい二者択一に直面する。欧州では、ロシアが軍備を再構築するなか、停戦監視の役割を委ねられるのではないかとの懸念が広がっている。
関係者によると、検討されている合意案には、ロシアがウクライナのヘルソン州およびサポリージャ州における現在の前線で攻撃を停止することが含まれる見通し。ただ、合意の条件や計画は依然として流動的であり、今後変更される可能性があるという。
ロシアが現在占領している地域の一部、特にサポリージャ原子力発電所を含む領土について、放棄に応じる用意があるかどうかは不明だ。