プロ野球界で近年注目を集めるオリックス・バファローズは、2023年に主催公式戦の入場者数が200万人を突破(214万9202人)し、ファン層を年々拡大しています。この驚異的な成長の裏には、緻密で効果的な広報戦略の存在があります。ファンを魅了し続ける企画が次々と生まれる秘訣は何なのか。今回は、オリックス野球クラブ株式会社の広報宣伝部に所属する、広報宣伝部長の後藤俊一氏、プロジェクトマネージャーの花木聡氏、西田光氏に、その舞台裏とオリックス・バファローズ広報戦略の核となる考え方についてお話を伺いました。
斬新な企画の連発とその背景
女性ファンをターゲットとした「Bsオリ姫デー」や、人気お笑いコンビをモチーフにした「キングオブコンビ」など、オリックス・バファローズの広報戦略は常に話題の中心です。インターネット上では「センス良すぎ」「天才かよ」といった称賛の声が相次ぎ、多くのファンを惹きつけています。これらのユニークで魅力的な企画は、どのようにして生み出されているのでしょうか。
「緻密な戦略ではない」真の秘訣
後藤氏は、多くの人が想像するような「緻密な戦略に基づいて生み出しています」という答えを謙虚に否定します。「そういったものはありません」としながらも、何も考えていないわけではないと強調します。彼らが常に意識しているのは「ファン目線」であること、そして「選手の魅力を最大限に伝える」にはどうすれば良いかという問いです。
企画の立案には、イベント担当部署をはじめ、多岐にわたる部署の担当者が集まってアイデアを出し合います。広報宣伝部としては、「この施策は本当にファン目線に立っているか?」「選手の魅力をしっかりと伝えられるか?」と自問自答を繰り返し、企画を何度も練り直すプロセスを踏んでいます。この徹底したファンファーストの姿勢が、心に響く企画を生み出す源泉となっています。
アイデアを生む組織文化と権限委譲
後藤氏が語るように、ユニークな発想が生まれるためには、組織全体の「空気作り」と「権限委譲」が極めて重要です。各部署が集まるミーティングは週に1〜2回のペースで定期的に実施され、参加者全員が自由にアイデアを出しやすい雰囲気が醸成されています。具体的には、出されたアイデアを頭ごなしに否定するのではなく、まず「どうすれば実現できるか」を建設的に考える姿勢を心がけているとのことです。
さらに、球団のロゴやユニフォームのデザイン、それに伴う選手の撮影といったクリエイティブ関連の業務も広報宣伝部が担当している点も特筆すべきです。これにより、広報メッセージとビジュアルイメージの一貫性が保たれ、より強力なブランドイメージが構築されています。この組織的な取り組みと、現場への適切な権限委譲が、オリックス・バファローズの広報戦略の成功を支える基盤となっています。
結論
オリックス・バファローズのファン獲得と入場者数増加を牽引する広報戦略は、一見すると綿密な計画の賜物に見えますが、その核心は「ファン目線」と「選手の魅力最大化」というシンプルな理念にありました。各部署が協力し、自由にアイデアを出し合える組織文化、そしてアイデアを現実のものとするための権限委譲が、オリックス広報の独創性と成功を支えています。この事例は、いかに組織が一体となってファンとの接点を深め、感動体験を提供できるかが、現代におけるスポーツエンターテインメントの成功を左右する鍵であることを示唆しています。
参照元
- Yahoo!ニュース(東洋経済オンライン):プロ野球オリックス、ファンを魅了する秘訣は「緻密な戦略ではない」広報戦略の裏側を訊く