2018年1月、滋賀県で発生した看護学生による母親殺害、遺体解体遺棄事件は、世間に大きな衝撃を与えました。この痛ましい事件の背景には、長年にわたる深刻な教育虐待がありました。被告である当時31歳の女性は、母親に敷かれたレールの上を歩み続け、精神的に追い詰められた末に、自らの手で母親の命を奪うという選択をしてしまいます。本記事では、この悲劇に至るまでの詳細な経緯と、娘の内に芽生えた殺意の深層に迫ります。
滋賀県の看護学生が母親を殺害した事件、教育虐待の悲劇
精神的支配と母親の過激な言動
被告の女性(以下、娘)は、母親による厳しい教育方針と精神的な支配の下で育ちました。その虐待は、時に過激な行動を伴いました。例えば、娘がスマートフォンを所持していたことを知った母親は、娘が自分で購入したそのスマホを奪い、自宅の庭の石で叩き壊しました。さらに、娘に靴下のまま庭石の隣で土下座、謝罪させた上で、その様子を撮影するという、娘の尊厳を深く傷つける行為に及びました。この出来事が、娘の中に初めて母への殺意を芽生えさせるきっかけとなったとされています。
LINEでのやり取りも、母親からの精神的攻撃の場となっていました。2017年12月24日から26日にかけて、母親は娘に対し「どうせ茶番だろ。助産師の国家試験が終われば、あんたは間違いなく裏切る。私はニべもなく放り出される。だから私はあんたに復讐の覚悟を決めなければならない。母の生きた証だよ!」「ウザい! 死んでくれ! 死ね!」など、激しい言葉を浴びせました。母親は、娘が看護師になることを決して許さないと強調し、娘を精神的に追い詰めていきました。このような母親の過干渉と罵倒は、娘の心を深く蝕んでいったのです。
殺意の芽生えと計画性
母親からの激しい叱責が続いた結果、娘の心には明確な殺意が芽生え、具体的な計画へと発展していきました。2018年1月5日、助産師学校の願書提出に関して母親から再び激しい叱責を受けたこの日、娘は大学のパソコンを使用し、「ペディナイフ 殺人」といった物騒なワードでインターネット検索を開始します。さらに同月14日には、「ナイフの殺害の仕方 裏・復讐代行業者裏サイト」など、具体的な犯行の手口や復讐に関連するサイトを閲覧していたことが明らかになりました。
そして、その3日後の17日には、メモ帳代わりに使用していたGmailの下書き機能に、以下のようなメモを残しています。「チャンスは何回もあったのに決めきれなかったことが悔やまれるぞ。早く決めよう。怖じ気づくな。やっぱり明確で強い思いがないと無理だということがわかった。一応準備だけした」。このメモは、娘が犯行への強い意志を固め、具体的な実行に移す準備を進めていたことを示唆しています。翌日が助産師学校の試験日であり、もし不合格であれば母親を殺害しようと決意して書き残されたものでした。この一連の行動は、娘が精神的に極限状態に追い込まれ、母親殺害を最終手段として考えていたことを物語っています。
結び
滋賀県で発生した看護学生による母親殺害事件は、単なる衝動的な犯行ではなく、長年にわたる教育虐待と精神的支配がもたらした悲劇の結末でした。母親の過度な干渉と罵倒、そして娘の心に芽生えた復讐の念が、最終的に取り返しのつかない事態を招いたのです。この事件は、教育虐待の深刻さと、それが人の精神に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにしました。社会全体が、虐待問題に対してより深く理解し、適切な支援の輪を広げることの重要性を強く訴えかける事例と言えるでしょう。
参考文献
- 文春オンライン (2018年1月20日). 「どこにでもいそうな子」がなぜ? 母親をバラバラにした『医学部9浪の娘(31)の画像』を見る. Yahoo!ニュースより一部抜粋.
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d080026b91aa026e1fd2a6c1c02290dc22d5c97