キャセイグループ、1000億香港ドル超の大型投資で未来へ飛躍:2025年上半期決算と株価の複雑な関係

香港を拠点とするキャセイグループは、2025年上半期の中間決算を発表しました。純利益は37億香港ドルに達し、前年並みの安定した業績を確保。2年連続で中間配当を実施するなど、堅固な財務基盤を示しました。しかし、この好調な発表にもかかわらず、決算発表直後から株価は下落傾向を見せ、市場の複雑な心理が垣間見えます。

巨額投資で未来を拓く:最新鋭機とサービス強化

キャセイグループは、米ボーイング社製の最新鋭長距離機「777-9」を14機追加発注することを発表しました。これにより、同型機の総発注数は35機に達し、グループ全体の航空機更新・拡充計画は100機以上という大規模なものとなります。さらに、新しい客室プロダクト、ラウンジのリニューアル、高速Wi-Fiの導入など、顧客体験を向上させるための総額1,000億香港ドルを超える大型投資を計画しています。パトリック・ヒーリー会長は、「この包括的な投資は、香港を世界有数の国際航空ハブとしてさらに強化し、顧客体験を新たな次元へと引き上げるもの」と述べ、香港の航空拠点としての未来へのコミットメントを強調しました。

キャセイグループのイメージ画像:2025年上半期決算発表と戦略的投資を象徴キャセイグループのイメージ画像:2025年上半期決算発表と戦略的投資を象徴

堅調な業績の裏にある課題:2025年上半期決算の詳細

2025年上半期の業績は、旅客数と輸送能力の着実な増加、貨物部門の安定した収益、そして燃油費の低下が主な寄与要因となりました。旅客収益は若干の低下が見られたものの、全体としては堅調な推移を維持しています。特に貨物部門では、電子商取引関連の需要が引き続き堅調で、キャセイカーゴは高い評価を得ています。関連会社の損失も前年同期の3億4,200万香港ドルから1億8,100万香港ドルへと大幅に縮小し、グループ全体の収益性改善に貢献しました。

グローバルネットワークの拡大と顧客体験の向上

今年に入り、キャセイパシフィック航空と香港エクスプレスは合計19の新規就航地を発表し、既に運航を開始しています。これにより、世界100以上の都市への乗り入れが実現し、特に夏季にはヨーロッパ路線の増便が注目され、香港と欧州を結ぶ利便性が大きく向上しました。このネットワーク拡充は、香港国際空港の第3滑走路開業に伴う将来的な需要増にも対応する戦略的な施策であり、香港の国際競争力を高める重要な位置づけです。

サービス面では、2026年にはA330型機にフルフラットのビジネスクラスを導入し、2027年には777-9型機に世界最高水準のファーストクラスを搭載する計画が進んでいます。既存のビジネスクラス「アリア・スイート」は既に国際的なデザイン賞を受賞しており、高い評価を受けています。さらに、今年8月からは全機材で座席背面機内エンターテインメントと高速機内Wi-Fi接続を100%提供するなど、デジタル化による顧客体験の向上にも力を入れています。地上施設においても、香港国際空港の「ザ・ブリッジ」ラウンジは全面改装を終え再開。北京の旗艦ラウンジも今月中に再オープン予定であり、2026年にはニューヨークにも新ラウンジを開設するなど、投資は多岐にわたります。

市場の懸念と株価下落の要因

こうした前向きな発表や大規模投資計画にもかかわらず、キャセイの株価は決算発表後の3営業日で約12%下落しました。市場が懸念している主な要因としては、旅客収益の減少傾向、特に日本路線などでの運賃下落による収益性への不安が挙げられます。また、傘下のLCCである香港エクスプレスの赤字拡大も懸念材料です。貨物事業についても、パンデミック期の好調から一転、成長鈍化の兆しが見られるとの指摘があり、これらの要素が複合的に影響し、アナリストの一部がキャセイ株を「売り」に格下げするなど、今後の業績見通しに対する慎重な姿勢が広がっています。

キャセイグループは、持続可能性、デジタル化、そして顧客体験の向上を軸に、今後も成長を続ける方針を掲げています。ヒーリー会長は、「我々は香港の航空ハブとしての地位を守るだけでなく、さらに高めていく責任がある」とコメントし、逆風の中でも長期的なビジョンを追求する姿勢を示しました。市場の評価と企業の戦略的投資の間で、キャセイグループの今後の動向が注目されます。

参考資料

  • みんなの経済新聞ネットワーク
  • Yahoo!ニュース(元記事)