福岡県新宮町は11日、低気圧と前線による記録的な大雨の影響を受け、同町が誇る地下式下水処理施設「新宮中央浄化センター(アクア新宮)」(新宮町中央駅前2)が完全に水没し、現在稼働不能に陥っていると発表しました。この事態を受け、汚水処理ができないため、ポンプでくみ上げた汚水を消毒後、河川などへ放流せざるを得ない状況が続いています。施設の本格的な復旧時期は現時点では未定であり、町は早急な対応として仮設の処理設備の建設も視野に入れ、検討を進めている模様です。
地下式施設の特殊性と記録的大雨
全国的にも珍しい地下構造を持つ「アクア新宮」は、通常の雨水であれば一定量まで排水・処理できる設計が施されていました。しかし、今月9日午後11時40分までの1時間で約120ミリという記録的な短時間大雨が同町を襲い、「記録的短時間大雨情報」が発表されるほどの集中豪雨となりました。この短時間での大量降雨により、施設に接続されている下水道管から想定をはるかに超える雨水が一気に流入。地下施設が急速に浸水する事態を招きました。
大雨により水没し、稼働不能となった福岡県新宮町の地下式下水処理施設「新宮中央浄化センター(アクア新宮)」の外観
施設水没の経緯と現在の状況
職員が10日午後6時頃に施設内の点検を行った際、地下2階の設備が約30センチの深さまで浸水していることを確認。直ちにポンプによる緊急排水作業を開始しました。しかし、施設の外部から流入する雨水の量が排水能力を大幅に上回っていたため、排水は追いつかず、最終的に地下2階部分は完全に水没してしまいました。これにより、下水処理機能が完全に停止しています。現在、町は浄化センターで処理できなくなった汚水をポンプでくみ上げ、最低限の消毒処理を施した上で外部へ放流することで、一時的な対応を行っています。
住民生活への影響と町からの要請
今回の「アクア新宮」の機能停止は、新宮町の一部地域を担当しており、約7300世帯、約1万7000人もの町民の生活に直接的な影響を及ぼしています。町は町民に対し、「多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」と陳謝するとともに、下水処理能力の低下による環境負荷の増大や公衆衛生への影響を最小限に抑えるため、生活排水の使用を必要最低限に留めるよう強く呼びかけています。
まとめと今後の展望
福岡県新宮町の「新宮中央浄化センター(アクア新宮)」の機能停止は、記録的な大雨がインフラにもたらす脆弱性を浮き彫りにしました。地下式という特性を持つ施設が、想定外の集中豪雨により水没し、汚水処理機能が停止するという深刻な事態に至ったことは、今後の気象変動への対策を再考させる契機となります。町は現在、仮設処理設備の導入を含め、早期の復旧に向けたあらゆる可能性を模索しており、町民への影響を最小限に抑えるための対応が急がれています。