モルガン・スタンレー、S&P500の2025年7200到達を予測:企業収益の「ローリング回復」が推進力

モルガン・スタンレーは、今後12カ月で米国株が新たな高値に達する可能性が高いとの見方を示しており、その根拠として企業の収益見通しを挙げている。特に、同社の強気シナリオでは、S&P500指数が2025年までに現在の水準から約12%増となる7200ポイントまで上昇すると予測している。これは、同社が「ローリング回復」と称する企業収益の新たな局面が進行中であることによるものだ。

「ローリング収益不況」からの脱却

2022年から続いていた「ローリング収益不況」、すなわち一部の地域や産業のみで景気後退が進行している状況は、終焉を迎えたとモルガン・スタンレーは分析している。今年4月にドナルド・トランプ元大統領による関税発表が市場に一時的な打撃を与えた後、企業収益は複数の前向きな要因によって押し上げられ始めている。モルガン・スタンレーの投資責任者であるマイケル・ウィルソン氏は、この4月の価格変動が、長期にわたる収益不況の終わりを象徴していると述べている。

複数の要因が牽引する「ローリング回復」

ウィルソン氏によると、現在の市場は「ローリング型回復」へと移行している真っただ中にあるという。この回復を後押しする主な要因は多岐にわたる。

  • ポジティブな営業レバレッジ(Positive Operating Leverage): 企業の売上増加が利益の伸びを上回る状況で、収益性が向上している。
  • AI導入(AI Adoption): 人工知能の広範な導入が、企業の生産性向上とコスト削減に貢献している。
  • ドル安(Weak Dollar): ドル安は米国企業の海外収益を増加させ、輸出競争力を高める効果がある。
  • トランプによる税制改革関連法(OBBBA)による税減(Tax Cuts under Trump Admin’s OBBBA): 特定の税制優遇措置が企業の税負担を軽減し、手元に残る利益を増加させている。
  • 前年比成長の容易な環境(Easier Year-over-Year Growth Environment): 過去の比較対象となる前年の業績が低かったため、相対的に高い成長率を達成しやすい環境にある。
  • 多くの業種で蓄積された需要(Accumulated Demand in Many Sectors): パンデミック中やその後の経済停滞により抑制されていた需要が、現在放出されつつある。
  • FRBの利下げ期待(Expectations of Fed Rate Cuts): 2026年第1四半期までに米国連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行う可能性が高いという見方は、企業の資金調達コストを削減し、投資を促進すると期待されている。

ニューヨーク証券取引所の取引フロア風景。S&P500の株価変動と市場回復の背景。ニューヨーク証券取引所の取引フロア風景。S&P500の株価変動と市場回復の背景。

高い評価額は正当化されるか

一部の市場関係者が懸念している株価の高い評価額についても、モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、現状ではそれが正当化されているようだと述べている。これは、上述した複合的なポジティブ要因が、市場の楽観的な見通しと高い株価を支持しているためと考えられる。企業収益の力強い回復と、それを支えるマクロ経済的要因が、S&P500のさらなる上昇を後押しするというのが、モルガン・スタンレーの主要な見解となっている。

(参照:Business Insider Japan、Samuel O’Brient)