暑い夏、日本の歴史と文化に触れる城巡りは魅力的ですが、炎天下での散策は少々躊躇しがちです。しかし、もし城の近くに心身を癒す名湯が待っているとしたら、その体験は全く異なるものになるのではないでしょうか。汗を流した後に温泉に浸かることで、夏の城巡りの疲労は癒され、より快適で記憶に残る旅となるでしょう。今回は、そんな夏の城巡りに最適な、歴史ある名城と、その周辺で楽しめる温泉の組み合わせを二つご紹介します。信州の真田氏ゆかりの地から、越前の現存天守まで、歴史と癒しが織りなす旅へ出発しましょう。
真田氏ゆかりの堅城と信州最古の名湯:上田城と別所温泉
長野県上田市に位置する上田城は、戦国の名将・真田昌幸が築き、徳川の大軍を二度にわたり退けたことで知られる難攻不落の城です。現在の上田城は元和8年(1622年)に小諸から移ってきた仙石忠政によって再建されたものですが、その縄張りは真田時代のものが踏襲されていると考えられています。
二度にわたり徳川の大軍を退けた真田氏の居城、上田城の全景
城の魅力は多岐にわたります。かつて千曲川に面していた尼ヶ淵の断崖下から見上げる光景は、この城がいかに堅牢な要塞であったかを彷彿とさせ、訪れる者を圧倒します。現存する2棟の櫓(うち1棟は遊廓に移築されたのちに城に戻された)がその景観にアクセントを加え、特に本丸東虎口では、平成6年(1994年)に伝統工法で復元された櫓門と塀が往時の威容を取り戻し、力強い城の入口を演出しています。
上田城を巡った後は、心ゆくまで温泉で疲れを癒すことができます。上田市内からは、上田電鉄別所線やバスで約30分のところに、1000年以上の歴史を誇る「信州最古の湯」として知られる別所温泉があります。弱アルカリ性の単純硫黄泉は「美肌の湯」としても評判で、肌がすべすべになると言われています。標高570メートルの高地に位置するため、夏の暑さの中でも比較的涼しく、快適な温泉体験が期待できるでしょう。
現存天守の古城と福井屈指の名湯:丸岡城と芦原温泉
福井県坂井市にそびえる丸岡城は、全国に12しかない「現存天守」の一つです。以前は「現存最古の天守」とされていましたが、近年の学術調査により寛永3年(1626年)以降に建てられたことが判明しました。それでもなお、二重三階の小規模ながら、初期の天守に通じる望楼型の古風な外観は、その歴史的価値と美しさを色濃く残しています。
丸岡城の屋根には、寒冷な越前の地ならではの石瓦が葺かれているなど、この城にしかないユニークな特徴も数多く見られます。昭和23年(1948年)の福井地震では天守台の石垣もろとも倒壊するという苦難を経験しましたが、幸運にも数年前に行われた解体修理の詳細な記録が残っていたため、元の部材を極力使って再建されました。この「不屈の城」は現在、国宝指定を目指しており、その達成に向けて城山の整備が進められています。城山は麓から簡単に登ることができ、歩く距離も少ないため、夏の散策にも適しています。
丸岡城の歴史に触れた後は、福井県が誇る名湯で旅の疲れを洗い流しましょう。丸岡城からバスでわずか十数分のところに、福井県屈指の温泉街である芦原温泉(福井県あわら市)が広がっています。含塩化土類食塩泉であるこの温泉は、温泉療法医が勧める「名湯百選」にも選ばれるほどの名湯として知られ、効能豊かな泉質で訪れる人々に深い癒しを提供します。
まとめ
夏の暑い時期でも、日本の名城巡りを快適に楽しむための最高の組み合わせは、やはり歴史ある城と、その疲れを癒す温泉です。上田城と信州最古の別所温泉、そして現存天守の丸岡城と福井屈指の芦原温泉。これら二つの組み合わせは、日本の奥深い歴史に触れながら、心身ともにリフレッシュできる特別な旅を提供します。次の夏休みは、ぜひこれらの場所を訪れ、歴史のロマンと温泉の癒しを存分に堪能してみてはいかがでしょうか。
参考文献: