川崎市議会は12日、公共の場でヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返した者に50万円以下の罰金を科す全国初の刑事罰規定を盛り込んだ差別禁止条例案を可決した。成立した条例は、罰則につながらない一部の規制を12月と来年4月に先行し、周知期間を経て来年7月から全面施行となる。
条例では、道路や公園で特定の国や地域の出身者らに対する不当な差別的言動を禁止。違反者にはまず勧告し、繰り返した場合は命令を出す。それでも従わなければ氏名などを公表し、警察や検察を経て、裁判所が50万円以下の罰金刑を下す。インターネットでの差別的言動も市が拡散防止の措置を取ると明記した。
コリアタウンがあり、在日韓国・朝鮮人が多く居住する川崎市では、過去に住人らを誹(ひ)謗(ぼう)中傷する内容のデモが頻発。平成28年の「ヘイトスピーチ解消法」成立の契機となった。市内では誹謗中傷はほぼ見られなくなっているが、市は再発防止と抑止効果を狙い、今回の条例案を提出した。
一方、市内では現在、特定の団体による街宣活動と、それを「ヘイトスピーチだ」と指摘する集団による対立が頻発。条例にはヘイトスピーチに該当する文言が表だって発せられない対立への「抑止力はない」(市担当者)といい、対立を懸念する市側には、新たな対応が求められている。