富の象徴とも言えるタワーマンション(タワマン)は、不動産価格が高騰する現代においてもその数を増やし続けています。都心部のみならず、郊外や地方でも新たな建設が相次ぐ中、タワマンの歴史はまだ30年程度と浅く、「長く住んだ人の生の声」を聞く機会は多くありません。本稿では、比較的築年数を重ねた「タワマン第一世代」の住民に焦点を当て、彼らが直面した課題から、将来的に多くのタワマンが抱えるであろうリスク、そしてその実態に迫ります。初回となる今回は、タワマンの街としても知られる豊洲地域を取り上げ、特に災害時の安全性について深く掘り下げていきます。
東日本大震災が突きつけたタワマンの脆弱性?
日本は「災害大国」と言われるほど、私たちの生活は常に自然災害と隣り合わせにあります。中でも、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、多くの人々の記憶に深く刻まれています。この震災後、超高層のタワーマンションが集中する地域は、その災害への脆弱性を強く指摘されるようになりました。
今回取材に協力してくれた、豊洲地域に住む不動産業界勤務の男性(44歳)が暮らすタワマンもその一つです。東日本大震災の発生時、男性の住むタワマンでは停電によりエレベーターが停止。エントランス部分には約300人もの人々があふれる状態となりました。男性も仕事から帰宅後、エレベーターが止まっていたため、自室まで40階超を自力で駆け上がったと言います。このタワマンでは東日本大震災のほか、東京電力管内での大規模停電によってもエレベーターが停止した経験があり、これら「二度の停電」とエレベーター停止の話を聞くと、タワマンは災害に弱いという印象を抱くかもしれません。
豊洲地域の液状化とタワマンの構造的安全性
しかし、これらの停電はタワマンに限った話ではなく、一戸建ても含めたどの住宅でも起こりうる現象です。近隣の液状化現象を不安視する向きもありますが、豊洲周辺では東日本大震災時においても液状化現象は発生しませんでした。
豊洲の街並みとタワーマンション群。東日本大震災時にも液状化現象が発生しなかったことが背景にある地域の安定性を示唆する
男性は語ります。「災害のときにタワマンは危ないと言われますが、倒壊することはほぼありえないので、実は安全です。不動産業界にいる立場からしても、構造的には問題ないと考えています。私のように家族構成が妻とお腹の中の子ども、ペットという形であれば、災害時に無理にタワマンから動かないほうがいいとすら思っています」。彼の言葉は、タワマンが持つ「耐震性」と「構造上の信頼性」に言及しており、表面的な災害リスクだけでなく、その本質的な安全性を見極めることの重要性を示唆しています。
豊洲のタワーマンションに住む、不動産業界に勤務する男性(44歳)の肖像。タワマンの災害耐性に関する彼の見解が記事の核心となる
豊洲のタワマンに住む男性の生の声は、タワマンの災害リスクに対する一般的なイメージに一石を投じるものです。エレベーター停止や停電といった生活上の不便は確かに存在しますが、それはタワマン特有のものではなく、建物の構造的な安全性、特に倒壊リスクにおいては、むしろ強固であるという専門家としての見解が示されました。液状化現象の不安も、豊洲地域では東日本大震災時に発生しなかったという事実が、その安全性を裏付けています。タワマンを選ぶ際には、単なる高層という点だけでなく、地域特性や建物の構造的強度、そして実際の住民経験に基づいた多角的な視点から検討することが重要です。
参考資料
- 『「賃料は30万円台、売ったら2億円以上」だが…豊洲のタワマン”買って20年弱”の正直な感想とは? 住人に聞いた』 – 東洋経済オンライン (本記事前編)
- Yahoo!ニュース – https://news.yahoo.co.jp/articles/c210de114f99a2232ca620b03152532f34ec3cf0