近年、日本では「毒親問題」が深刻化しており、特に母親が息子を精神的に支配し、その人生を破壊するケースが注目されています。過干渉や暴言によって、成人後も生きづらさを抱え続ける息子たちの実態が、ノンフィクション・ライター黒川祥子氏の連続インタビューによって明らかになりました。女優の遠野なぎこさんも実母からの虐待を公表しており、この問題の広がりを示しています。
「私は人間ではない」と語る、50代のひきこもり男性の告白
黒川氏が参加した「ひ老会」(ひきこもりと老いを考える会)で出会った山本龍彦さん(仮名、57歳)は、自身を「人間ではない」と表現しました。彼は1967年生まれの57歳で、長身の端正な顔立ちをしていますが、その言葉は毒母による深い心の傷を物語っています。
社会問題化している毒親による子どもの虐待(写真はイメージです)
山本さんは27歳で社会との接点を完全に失い、29歳から精神科治療を開始。その後は家を出て生活保護を受けながら、単身アパートで治療を続けてきました。長きにわたり、母親に内面まで監視され、感情のはけ口とされてきた彼の人生は、まさに母親に「支配」されてきたものです。
50代半ばでようやく見つけた「自分第一」の生き方
2025年2月、「ひ老会」で再会した山本さんは、以前よりも晴れやかな表情を見せていました。彼は「1年前ぐらいからようやく、ひきこもりと生活保護の自分を受け入れられるようになった」と語り、それまでは罪悪感と自責の念に囚われていたことを明かしました。そして、「自分のことを第一に、母親より、自分だと」思えるようになったと言います。これは、彼が生まれ落ちてから50代半ばに至るまで、自身の人生を生きることができなかったという悲しい現実を裏付けています。毒母の呪縛から逃れ、自己受容に至るまでの道のりは、想像を絶するほど長く困難なものでした。
終わりに
「毒母問題」が引き起こす息子たちの「生きづらさ」は、時にひきこもりといった形で顕在化し、その影響は成人後も長きにわたります。山本さんのように50代半ばでようやく自己受容への第一歩を踏み出せるケースは、この問題の根深さを示しています。社会全体でこの問題への理解を深め、苦しむ人々が支援につながるよう、さらなる議論と対策が求められます。





