中国「国境を越えた弾圧」の実態報告:在日ウイグル人ら日本政府に対策要請

中国共産党政権による「国境を越えた弾圧」が、日本に暮らす香港、新疆ウイグル、チベット、内モンゴル各地域の出身者に深刻な影響を及ぼしています。先日、東京都内で開催されたシンポジウムでは、中国当局が故郷に残された親族を脅迫し、海外在住者への圧力や嫌がらせを強めている実態が詳細に報告されました。参加者たちは、日本における自身の安全確保のため、法的な枠組みの整備と情報収集の強化を日本政府に強く訴えました。この問題は、日本の主権と民主主義的価値観への挑戦として、早急な対応が求められています。

「精神的な拷問」在日ウイグル人が直面する現実

日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長は、日本で生活するウイグル人が直面する苦境を「民主主義の日本で自由と安全が保証されるはずだったが、中国の手はどこまでも追いかけてくる」と説明しました。アフメット会長のもとには、在日ウイグル人が中国当局から受けた圧力を示す音声データや動画が多数寄せられています。

少なくない在日ウイグル人が、新疆ウイグル自治区に残した親族を現地当局に「人質」に取られる状況に置かれています。彼らは、住所、勤務先、子どもの通う学校の写真といった個人情報の提供を強制され、さらには現地の家族を通じて中国警察関係者のSNSへの「友人登録」を懇願されるケースも報告されています。アフメット会長は、このような状況を「受けるも拒否するも地獄。拒否すれば家族がひどい目にあう。個人情報を提供すれば常に尾行されている感覚になる」と表現し、精神的な苦痛を訴えました。

日本ウイグル協会主催「中国による国境を越えた弾圧」シンポジウムの様子、東京都文京区で講演する参加者日本ウイグル協会主催「中国による国境を越えた弾圧」シンポジウムの様子、東京都文京区で講演する参加者

さらに、SNSで警察関係者を追加せざるを得ない場合、「警察はウイグル協会や、ウイグル人を支援する団体や個人の情報を求めてくる」といいます。これは事実上の「スパイ活動の強要」であり、自責の念に苦しむウイグル人にとって「精神的な拷問」に他なりません。多くのウイグル人が日本国内で相談できる場所を見つけられず、鬱状態に陥るケースも少なくありません。アフメット会長は、「既存の法律の枠組みでは警察はどうしたらいいか分からないのが正直なところだ。これは日本の主権や価値観に対する挑戦であり、対策をお願いしたい」と述べ、中国による「国境を越えた弾圧」への具体的な対応を日本政府に要望しました。

香港国家安全維持法の影響と民主活動家への脅迫

香港では2020年6月に中国への抗議活動を規制する国家安全維持法(国安法)が施行されて以来、数十万人もの香港人が海外に移住したと推定されています。しかし、この国安法は香港域外での言動や外国人に対しても適用されるとされており、その影響は海外在住者にも及んでいます。香港警察は今年7月、海外に拠点を置く民主活動家19人に対し、国安法の「国家政権転覆容疑」で指名手配を行いました。

今回のシンポジウムで、香港の民主化を求める団体「香港民主女神(レディーリバティー香港)」の李伊東(アリック・リー)氏は、香港警察の動きについて「香港に残っている活動家の家族に嫌がらせをし、圧力をかけている」と強く非難しました。李氏自身も「両親も私の活動をやめさせるようにと脅迫を受けている」と具体的な被害を報告し、海外で活動する民主活動家とその家族が置かれている厳しい状況を明らかにしました。

日本政府への切実な訴えと今後の課題

今回のシンポジウムで浮き彫りになったのは、中国共産党政権による「国境を越えた弾圧」が、日本に避難してきた人々、特に新疆ウイグル、香港、チベット、内モンゴル出身者にとって、物理的な安全だけでなく精神的な自由をも脅かしているという深刻な現実です。親族への脅迫を通じた情報収集やスパイ活動の強要は、個人の尊厳を深く傷つけ、彼らの日本での生活の基盤を揺るがしかねません。

日本が自由で民主的な国家として、このような「国境を越えた弾圧」から在住者を保護することは、国際社会における日本の人権尊重の立場を示す上で極めて重要です。日本ウイグル協会をはじめとする各団体からの切実な訴えは、日本の法執行機関が既存の枠組みでは対応しきれない課題に直面していることを示唆しています。日本政府には、この新たな形の脅威に対して、国際的な協調を図りつつ、国内法整備の検討や、被害者への相談・保護体制の強化を早急に進めることが求められます。これは単なる人道的な問題に留まらず、日本の主権と安全保障に関わる重要な課題として、より積極的な対策が期待されます。

参考文献