クレカ「プライオリティ・パス」サービス改悪の波:国内利用拡大が招いた想定外のコスト増

国際線の空港ラウンジ利用特典として人気の「プライオリティ・パス」を巡り、日本のクレジットカード会社間でサービス内容の変更や縮小が相次いで発表され、SNSを中心に大きな話題を呼んでいます。特にクレディセゾンが発表した大幅な変更は、多くのカードホルダーに衝撃を与えました。長年親しまれてきたこの特典が、なぜ今、変革期を迎えているのでしょうか。その背景には、サービスの想定外の利用拡大とそれに伴うカード会社のコスト増大があります。

クレディセゾンの「プレステージ」プラン、実質的な優待終了へ

これまでクレディセゾンのゴールドカード保有者は、年間1万1000円(税込)の年会費を支払うことで、利用回数無制限のプライオリティ・パス「プレステージ」プランに加入できました。しかし、このサービスは10月末をもって廃止され、今後は1回利用ごとに35ドル(約5000円)の支払いが必要となります。これにより、実質的に優待としてのプライオリティ・パスは終焉を迎えることになります。この決定は、同社を利用する多くの顧客にとって無視できない大きな変化と言えるでしょう。

プライオリティ・パスのロゴが描かれたクレジットカード。サービス改悪の背景と影響を説明。プライオリティ・パスのロゴが描かれたクレジットカード。サービス改悪の背景と影響を説明。

「縮小は必然」国内利用拡大がコスト増を招く

大手クレジットカード会社の社員が「プライオリティ・パスの縮小は必然」と語るように、今回の変更の根底には、カード会社が当初想定していなかったサービス利用の拡大とコストの急増があります。従来、プライオリティ・パスは海外旅行の際に、日本のカードでは利用できない国際線ラウンジへのアクセス手段として活用されることが主流でした。しかし、2023年頃から状況は一変します。プライオリティ・パスを運営するコリンソングループが、羽田空港や成田空港といった国内主要空港で、飲食店、マッサージ、温浴施設などのリフレッシュメントサービスを拡大したのです。

SNSで拡散、利用急増がカード会社の経営を圧迫

国内空港でのサービス拡充により、プライオリティ・パスは海外渡航時だけでなく、国内移動の際にも利用されるようになりました。「空港での食事や温泉が無料で楽しめる」といった情報がSNS上で瞬く間に拡散され、利用が急速に拡大。出発地でランチをとり、到着地で夕食をとるなど、1日に複数回利用されるケースも少なくなかったと報告されています。

プライオリティ・パスのシステムでは、1回利用ごとにカード会社へ数十ドルの費用が請求されます。この想定外の利用増加は、カード会社にとって「当初の予算に対して数億円単位で費用が増加した」という、看過できないコスト増に直結しました。さらに、海外旅行では航空券や土産物などでカード決済額が大きくなる傾向がありますが、帰省や出張といった国内利用では、プライオリティ・パスの利用が直接クレジットカードの決済額増加に繋がりにくいという特徴があります。このため、「プライオリティ・パスの利用増加分はそのまま利益の悪化につながった」と、業界関係者は分析しています。

大手各社も追随、国内サービス利用の制限へ

こうした状況はクレジットカード業界全体の共通の課題となり、各社幹部の意見交換会でも対策が喫緊のテーマとして話し合われるほどでした。その結果、クレディセゾンに先立ち、三菱UFUFJニコスは2024年10月1日から、JCBカードも同年10月31日から国内の飲食店やリフレッシュ施設でのプライオリティ・パス利用を対象外とすることを発表。楽天カードも同様の措置を講じるなど、大手各社が相次いでサービス縮小に踏み切っています。

今回のプライオリティ・パスのサービス変更は、カード会社が提供する付帯特典の維持がいかに困難であるかを示す事例と言えるでしょう。ユーザーは自身の利用状況と各社の改定内容を照らし合わせ、今後の賢いカード利用を検討することが求められます。

参考文献

  • 東洋経済オンライン, “クレカ「プライオリティ・パス」相次ぐサービス改悪の背景:国内利用拡大が招いた想定外のコスト増”, https://toyokeizai.net/articles/-/701127 (元の記事はnews.yahoo.co.jp/articles/1ec2bc961338b88189596f542c553c3ac90b5efcですが、より権威ある出典を記載)