ウクライナ東部でのロシアの進軍が続く中、戦線の遥か後方では新たな攻勢が展開されています。ロシアはウクライナの都市や民間インフラに対するドローン(無人機)による夜間攻撃を著しく強化しており、ドローンの急速な増産に伴い、攻撃の激しさは増す一方です。これらの攻撃は、ウクライナの防空網に甚大な負担をかけ、民間人の士気を揺るがすことを目的としています。
ロシアのドローン攻撃によって破壊されたウクライナの建物。民間インフラへの脅威を示す。
安価な大量生産が支えるロシアの新たな攻勢
ロシアは、イランから攻撃ドローン「シャヘド」の設計図を入手し、自国に大規模な生産工場を建設しました。これにより、毎月数千機ものシャヘド型ドローンが生産されています。これらのドローンは、必ずしも高速でハイテクなわけではありませんが、その安価さゆえに、クレムリンは一晩で700機以上ものドローンを発射することが可能となっています。専門家は、この「安価な大量攻撃」戦術が、ウクライナの防空システムを圧倒し、民間人の士気を挫く狙いがあると指摘します。
ロシアの戦術が進化するにつれて、ウクライナが保有する安価な防衛手段の効果は低下しており、より高価な弾薬や革新的な技術での反撃を余儀なくされています。
ドローン攻撃の顕著な増加
ロシアによるウクライナへのドローン発射回数は、過去と比較して飛躍的に増加しています。2023年には、一晩での攻撃回数が最大で7月9日の728回を記録し、これは前年の最大値である193回を大きく上回る数字です。この急増は、現代の戦争がますます無人自律機に依存する方向に進化していることを明確に示しています。
コストパフォーマンスで優位に立つロシア
ウクライナ国防省情報総局の発表によると、ロシアはシャヘド型ドローンを毎月6,000機以上生産する計画を進めています。これは、戦争初期にイランからドローンを購入していた時期と比べ、国内生産によりコストが大幅に削減されるためです。
例えば、2022年時点では、ロシアはシャヘド型ドローン1機あたり平均20万ドル(約3,000万円)を支払っていましたが、2025年には大量生産によりその金額が約7万ドルにまで下がると見られています。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の推定では、シャヘド136の価格は1機あたり2万~5万ドルとされており、これは地対空ミサイル1基が300万ドルを超える場合があることを考慮すると、非常に低コストです。
この比較的安価な生産コストにより、ロシア政府は夜間のドローン攻撃を強化し、より頻繁かつ大規模な攻撃を実施できるようになりました。CSISの分析によれば、戦争初期には月に約1回だったミサイルとドローンによる大規模攻撃が、2025年半ばには平均8日おきに発生するようになっています。
民間への深刻な影響と戦術の進化
絶え間ないドローン攻撃の脅威は、多くの民間人を恐怖に陥れています。ロシアは前線から数百キロ離れたウクライナの都市を長距離ドローンで攻撃する一方、ロシア支配地域に近い都市の住民は、FPV(一人称視点)ドローンによる日常的な攻撃に苦しんでいます。ヘルソン州の住民がCNNに語ったところによると、歩行者、車、バス、さらには救急車までもがFPVドローンに攻撃されており、標的に制限がないかのようです。
CSISのデータによると、ドローンが標的に命中した割合は2024年からほぼ倍増し、2025年4月以降には20%近くに達しています。CSISのアナリストは、「シャヘドが標的に命中したかどうかは本質的な問題ではない。重要なのは、テロ兵器が民間人に及ぼす複合的な心理的影響と、防空体制に与える継続的な負担である」と述べています。CSISの研究員は、ロシアの戦術が「継続的な圧力を維持すること」にあり、現在の戦略は「消耗戦」を重視していると指摘しています。
ウクライナの反撃と止まらない技術革新
ウクライナもまた、最前線ではFPVドローンで反撃し、ロシア領内のインフラや兵器施設の攻撃には長距離ドローンを使用しています。米シンクタンク戦争研究所(ISW)のロシア担当アナリスト、カテリーナ・ステパネンコ氏は、「あらゆる技術開発に対し、両国は既に対抗策を模索している。イノベーションのサイクルは非常に速く、わずか2~3週間のうちに技術革新への対抗策が現れている」と指摘し、現時点で効果的なアプローチも数カ月後には効果を発揮しなくなる可能性を示唆しています。
ISWによると、ウクライナとロシアは現在、戦場で自律的に判断を下す人工知能(AI)搭載ドローンのほか、空中攻撃対策としてミサイル発射よりも安価に配備可能な迎撃ドローンの開発にも取り組んでおり、ドローンを巡る技術革新競争は激しさを増しています。西側諸国、特に米国と北大西洋条約機構(NATO)の同盟国も、将来の紛争における優位性を維持するため、ドローンおよび対ドローン作戦の強化に積極的に取り組んでいます。
結論
ロシアによるウクライナへのドローン攻撃の激化は、現代戦における無人機の役割が決定的に重要になっていることを浮き彫りにしています。安価な大量生産、戦術の進化、そして民間への甚大な影響は、この戦争が技術革新と消耗戦の新たな段階に入ったことを示唆しています。ウクライナが防衛のために高価な資源を費やす一方で、ロシアは低コストのドローンで持続的な圧力をかけ続けています。この絶え間ない技術と戦術の革新競争は、戦争の行方を左右するだけでなく、今後の紛争のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。
参考文献
- CNN
- ウクライナ国防省情報総局
- 米戦略国際問題研究所(CSIS)
- 米シンクタンク戦争研究所(ISW)