トランプ氏、ハリス前副大統領の警護打ち切りを命令 – 政治的報復か

ドナルド・トランプ米大統領は8月28日、カマラ・ハリス前副大統領に対するシークレットサービス(大統領警護隊)による警護の打ち切りを命令しました。これは、ハリス氏の顧問が明らかにし、ホワイトハウス幹部もこの中止を認めています。この措置は、ハリス氏が回顧録のプロモーション活動を開始する直前というタイミングで行われ、一部からは政治的報復ではないかとの批判が上がっています。

警護打ち切りの経緯と法的背景

BBCが確認したトランプ氏の指示書は、8月28日付で、ハリス氏の警護について「法律で義務付けられた範囲を超えて、これまで大統領覚書によって認められていた警備関連の手続きをすべて、9月1日以降は中止する」と明記しています。

カマラ・ハリス前副大統領。ドナルド・トランプ氏の命令によりシークレットサービスによる警護が打ち切られた。カマラ・ハリス前副大統領。ドナルド・トランプ氏の命令によりシークレットサービスによる警護が打ち切られた。

ハリス氏は、今年1月に副大統領職を退任した後も、法律に基づき6カ月間の警護を受ける権利を有していました。この法定期間は7月に終了する予定でしたが、元上司であるジョー・バイデン前大統領が署名した指示により、警護はさらに1年間延長されていました。トランプ氏が8月28日付の文書でこの延長措置を撤回した形です。

米CBSは消息筋の話として、最近実施された脅威評価では、退任後6カ月の法定警護期間を超えてハリス氏の警備を延長するべきと判断されるような懸念材料は見つからなかったと伝えています。この評価結果が、トランプ大統領の決定に影響を与えた可能性があります。

回顧録発表直前のタイミングと影響

今回の警護打ち切り決定は、ハリス氏が2024年大統領選を振り返った回顧録「107日間」の出版にあたり、全国を回るプロモーション活動を開始する直前に下されました。ハリス氏はバイデン氏の撤退に伴い2024年7月下旬に大統領選に出馬しましたが、異例の短い選挙戦の末、同年11月7日にトランプ氏に敗北を認めていました。

米連邦議会は2008年、副大統領経験者とその配偶者、および16歳未満の子どもに対して、シークレットサービスによる警護提供を認める法律を制定しています。ハリス氏がジョー・バイデン前政権の終了に伴い副大統領職を退いてから、すでに7カ月以上が経過しています。なお、ハリス氏の夫で弁護士のダグ・エムホフ氏に対する警護は、法定期間の終了に伴い、7月1日に打ち切られています。

今回の決定により、ハリス氏はカリフォルニア州ロサンゼルスにある自身の所有物件および本人に対して配備されていた警護要員を失うことになります。さらに、潜在的な脅威を特定し事前に阻止するために行われていた、積極的な情報収集活動も終了します。同様の警護を民間で手配した場合、その費用は年間で数百万ドル(数億円)に上る可能性があります。

政治的報復との批判と過去の事例

カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事と、ロサンゼルスのキャレン・バス市長は、今回の発表に対して強い憤りを表明しました。バス市長はCNNに対し、「これは、解任や機密情報の取り扱い資格のはく奪など、政治的報復の長いリストに続く新たな復讐行為だ」と述べ、トランプ政権の政治的意図を強く非難しました。バス市長は、今回の措置によってハリス氏が危険にさらされるとし、ロサンゼルスでの安全確保に努める意向を示しています。

トランプ氏は今年1月にホワイトハウスに復帰して以降、複数の人物に対するシークレットサービスの警護を打ち切っています。その対象には、前大統領の子供であるハンター・バイデン氏とアシュリー・バイデン氏、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の元所長アンソニー・ファウチ博士が含まれます。また、マイク・ポンペオ元国務長官や、政権批判を強めていたジョン・ボルトン元国家安全保障担当補佐官など、第1次トランプ政権下の元高官や側近も、複数が警護を打ち切られています。

ハリス氏は副大統領在任中、複数の安全上の脅威に直面していました。元シークレットサービス関係者は、同氏が初の女性かつ有色人種の副大統領だったことが、危険性をさらに高めていたと指摘しています。2024年8月には、ヴァージニア州の男性が、ハリス氏およびバラク・オバマ元大統領に対して殺害、誘拐、傷害を行うとインターネット上で脅迫を行ったとして起訴されています。2021年には、フロリダ州の39歳の女性がハリス氏への脅迫行為を認め、有罪判決を受けています。この女性は、服役中の夫に送った動画の中で武器を見せながら、「襲撃」が50日以内に実行可能だと発言していました。

一方で、トランプ氏自身も昨年の大統領選期間に2度の暗殺未遂に遭っており、その際の警護にはシークレットサービスが重要な役割を果たしていました。今回のハリス氏への措置は、今後の政治情勢にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。

参考文献

  • BBC News (英語記事: Trump ends Secret Service protection for Harris)
  • 米CBS報道
  • CNN報道

(Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/dba95831e32ae2e7b5d13113d70b319b7df9f7d4)