歯列矯正で8本の歯に虫歯:中国女性の事例から学ぶ口腔ケアの落とし穴

歯列矯正は美しい笑顔を手に入れるための人気の治療法ですが、その裏には適切な口腔ケアを怠ると深刻なリスクが潜んでいます。最近、中国で20代の女性が5年間の歯列矯正後に8本の歯に虫歯ができたという衝撃的な事例が報じられました。この出来事は、矯正治療中の口腔衛生管理がいかに重要であるかを改めて浮き彫りにしています。

矯正治療中の思わぬ落とし穴:中国の20代女性に何が起きたのか

VNエクスプレスなどの報道によると、中国・遼寧省に住む20歳のワンさんは、2020年8月に約9000元(約18万円)を費やして歯列矯正を開始しました。しかし、治療開始から3年が経過した頃、歯に黒い点が見つかったにもかかわらず、担当の歯科医からは「矯正装置を外す際にまとめて治療する」との説明を受け、具体的な処置は行われませんでした。

治療の過程では、歯が計画通りに移動しない、前歯の神経が露出するなど複数の問題が発生。担当医師が長期休養に入ったことも重なり、治療は遅々として進まなかったといいます。結局、ワンさんは2023年に別の歯科医院へ転院し、そこで3カ月かけて歯並びの問題を解決しました。しかし、このほど5年ぶりに矯正装置を外したところ、彼女の歯8本が深刻な虫歯の損傷を受けていることが判明し、神経治療を余儀なくされました。

歯列矯正後に多数の虫歯が発生した歯のイメージイラスト歯列矯正後に多数の虫歯が発生した歯のイメージイラスト

口腔ケア不足が招く深刻な結果とその背景

ワンさん自身も「元々歯が弱かったことに加え、歯磨きは1日2回程度で、食後も水や洗口液ですすぐだけだった。口腔洗浄器のような補助具の必要性を知らなかった」と、自身の口腔衛生管理の不十分さを認めています。この告白は、多くの矯正患者が直面する現実を象徴しているかもしれません。

専門家は、矯正装置が歯の表面に「死角地帯」を作り出すことを指摘しています。この死角地帯には食べ物の残りかすが挟まりやすく、細菌が増殖しやすい環境が整うため、通常の歯磨きだけでは除去が困難となり、虫歯が急速に進行する可能性が高まります。矯正治療は歯並びを整える一方で、虫歯リスクを高める側面も持ち合わせているのです。

専門家が語る!矯正治療成功のための徹底口腔ケア術

このような深刻な事態を避けるため、専門家は矯正治療中の口腔ケアについて具体的なアドバイスを提唱しています。

  1. 徹底した歯磨き: 食事の後は必ず1日3回歯磨きを行うことが基本です。
  2. 補助具の活用: 矯正専用の歯ブラシ、歯間ブラシ、そして口腔洗浄器を併用することで、矯正装置の周辺や歯茎との境目など、隅々まで丁寧にケアすることが可能になります。専門家の中には、口腔衛生管理が不十分なため10代の患者の矯正治療を中止したケースもあるといい、自己管理が治療成功の鍵を握ると強調しています。
  3. 虫歯予防策の強化: フッ素含有の歯磨き粉の使用や定期的なフッ素塗布は、歯の再石灰化を促し、虫歯予防に効果的です。また、甘い飲み物、炭酸飲料、粘り気のある食べ物の摂取を制限することも重要です。
  4. 正しいブラッシングテクニック: 矯正装置が装着されている部分は、歯ブラシを斜めに当て、力を入れすぎずに振動させるように優しく、しかし何度も左右に動かして磨くことが推奨されます。

まとめ

中国の女性の事例は、歯列矯正が単に歯並びを整えるだけでなく、治療期間中の徹底した口腔衛生管理が不可欠であることを私たちに強く訴えかけています。美しい歯並びを手に入れるためには、専門家の指導を仰ぎ、日々のセルフケアに真摯に取り組む「自己管理」が最も重要です。これから矯正治療を始める方、または現在治療中の方は、この事例を教訓として、改めてご自身の口腔ケアを見直してみてはいかがでしょうか。


参考文献:

  • VNエクスプレス (元の報道元と推測される情報源)
  • Chosun Online (朝鮮日報日本語版)
  • 複数の歯科専門家による意見(記事内言及)